マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
<取材記者の本音>正直ガッカリのプロ野球トライアウト…キラリ光った楽天戦力外の“フルスイング”外野手とは?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNanae Suzuki
posted2020/12/11 17:15
12球団合同トライアウトを盛り上げた新庄剛志さん(48)
守っている選手も、声を上げて元気に動いている選手がいない。これだけみんな“紳士”だと、ふた声、三声でもかなり目立つ。
私なら、たとえばイニング初めの捕手の二塁送球の瞬間から、「おー、ナイスボール!」と声を張って、そのあとも、ひとつのプレーの“入り”には必ず「最初のひと声」を発して、シートバッティングを楽しくしようとしながら、自分のことも目立たせようと心がけるが、選手たちがそこに関心を持っていないように見えるのは、そんなことは「審査」に全く影響しないからだろうか。
なぜ「ファーストストライク」を狙わないのか…
もっと驚いたのは、打者があっさりアウトになることだ。
カウント1‐1からの「対決」。確かに打者の方が不利ではある。しかし、投手だって2ボール1ストライクにはしたくないのだから、ストライクを取りにくる場面である。
そのいちばん美味しいはずの「ファーストストライク」に襲いかかろうとする打者が少ないのは、なぜか。
1球で追い込まれた後に、フォークか何かでキュッと落とされたら対応できる打者などトライアウトのレベルではそういないだろう。
99打席で41三振
案の定、そういうパターンで、バッタバッタと三振に切ってとられ、トライアウト全体で延べ99打席のうち、奪われた三振は41。アウトのうちの、なんと4割ほどが三振だったのには驚いた。
正直なところ、真っすぐにも、変化球にもかすりもせず、なんとかしようと食らいついていく気概も見えない選手がいたのには、ただただ、驚いた。
もっと、ギラギラしている「場所」なのかと思っていた。
何がなんでも……! 石にかじりついても……!
凡打を続けた打者が、バットを叩きつけてくやしがり、間一髪のタイミングの内野ゴロで打者走者が渾身のヘッドスライディングを敢行し、打ち込まれた投手が無念の涙をぬぐいながらベンチに引き上げる……勝手に想像していたのは、そういう崖っぷちみたいな場面ばかりだったのだが……。
キラリ光った楽天“戦力外の男”
そんななかで、私の目に飛び込んできた打者が1人だけいた。