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強敵ロシア勢も上回り、坂本花織が今季女子最高点! 「トータルパッケージ」の時代がやってきた? 
 

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野口美惠

野口美惠Yoshie Noguchi

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photograph byYukihito Taguchi

posted2020/12/10 11:25

強敵ロシア勢も上回り、坂本花織が今季女子最高点! 「トータルパッケージ」の時代がやってきた? <Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

国内ジャッジによる参考記録だが、グランプリ4戦を通じて坂本が今季女子の世界最高得点でNHK杯を制した

本番リンクの雰囲気で “練習”できたと考える

 ショートでは、トリプルアクセルで転倒。それでも樋口はそれをプラスに捉えた。

「ショートとフリーは入り方が違い、フリーの方が長く練習してきたので跳べる確率は高いです。試合の雰囲気でアクセルを跳ぶ経験ができました」

 本番リンクの氷の質や会場の雰囲気のなかで “練習”できたと考え、フリーでの初成功に集中した。

 迎えたフリーは、トリプルアクセルをクルッと無駄な力なくまわって、着氷。樋口は「初成功」の喜びで胸を一杯にしながら演技を続けた。しかし新たな課題もあった。

「着氷できたのが凄く嬉しくて、気持ちをすぐに切り替えなければなりませんでした。演技後半に集中力が無く、タイミング良くジャンプ出来ませんでした」

 演技中盤と後半に、3回転が2回転になるミスが2度。しかもトリプルアクセルは、結果的には4分の1回転が足りない「q」マークがつき、着氷でわずかに耐えたことで0.16点の減点となった。

「自分でも着氷で『あっ』とは思いました」

 今季導入された「q」は、基礎点をそのまま与え、ジャッジが出来映えの点として「-2」するもの。樋口のトリプルアクセルに対しては、ジャンプの質そのものは良かったためプラス評価をしてから「-2」するため、7人のジャッジのうち5人が最終的に「0~+1」をつけ、「トリプルアクセルは成功」とみなす評価をした。

 普通の選手なら「私はトリプルアクセルの成功者だ!」と主張したくなる状況だろう。しかし樋口はあえて成功をアピールせず、改善点を語った。

「自分でも着氷で『あっ』とは思いました。スピードも飛ぶ方向も良かったけれど、締めるタイミングがちょっと遅くなり回転をかけるのが遅れたかなと思います。緊張感のなかで着氷できたことで、次に繋がりました」

 あえて主張しなかったのは、次こそもっと素晴らしいアクセルを跳べるという意欲と自信の現れだ。

【次ページ】 北京五輪で世界と戦うためのトリプルアクセル

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