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マラドーナ死去25日前の熱弁がナポリに奇跡を呼ぶ 本拠地の超速改名、ガットゥーゾ親分と選手の優勝宣言
posted2020/12/09 17:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
満場一致だった。
12月4日、ナポリのホームスタジアム「サン・パオロ」は、所有権を持つナポリ市議会において改名が正式に可決、承認されて、「ディエゴ・アルマンド・マラドーナ」となることが決まった。
マラドーナ死去直後に発せられた市長の動議からわずか9日、通常なら10年はかかるとされるお役所仕事を劇的に短縮させたのだから、“マラドーナは死んでも奇跡を起こした”と言っても差し支えないだろう。
SSCナポリにとって、マラドーナはいちOBをはるかに超越した存在だった。指揮官ジェンナーロ・ガットゥーゾが率いる2020年のチームは、突然の訃報をどう受け止め、どう立ち向おうとしているのか。
11月25日、ブエノスアイレスから「マラドーナ死去」の一報が飛び込んできたのは、ナポリ湾に夕闇が降りる黄昏時だった。
実の子は「親父に会わせてくれ!」
ナポリを州都とするカンパーニア州には、新型コロナウイルス感染再拡大を警戒するイタリア政府当局によって夜間外出令が(当時)出されていたが、スタジアムには夜通し人だかりが絶えず、英雄の死を悼む発炎筒の煙の中でローソクやマフラーが幾千、幾万と献じられた。
折しも重度の新型コロナウイルス性肺炎を患い、ナポリ市内で治療中だった実子ディエゴ・アルマンドJr.は「親父に会わせてくれ!」と悲痛な叫びを上げたが、医師が南半球への移動を許すはずもなく、葬儀参列を断念と報じられた。
翌26日にELグループリーグ第4節のリエカ戦を控えていたナポリの選手たちも、少なくないショックを受けた。