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マラドーナ死去25日前の熱弁がナポリに奇跡を呼ぶ 本拠地の超速改名、ガットゥーゾ親分と選手の優勝宣言
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/12/09 17:00
「サン・パオロ」から「ディエゴ・アルマンド・マラドーナ」に改名された本拠地は“神”への愛情を示すファンであふれている
だが、悲しむのは勝ってから、と彼らは気丈にも目前のゲームに集中し、リエカを2-0で撃破。試合前にチームを代表して主将ロレンツォ・インシーニェがスタジアムへ献花したのに続き、試合後の真夜中にはFWドリエス・メルテンスがマラドーナ信仰の中心とも言える下町のスペイン地区へ、お忍びで献花に訪れた。
昨年10月、ナポリ在籍時のマラドーナの通算ゴール数「115」に追いついた小兵ストライカーは「俺がマラドーナに並んだなんて恐れ多い。神様に対して失礼だ」と、クラブ歴代最多得点王となった今も謙虚な姿勢を崩していない。
カトリックの国でも“神”なのだ
日本と違い、一神教であるカトリックの国でひとりの人間を“Dio(神)”と形容することは極めて稀だ。ただ、サッカーの世界にマラドーナを表すこれ以上の言葉は他になく、現チームの中にもMFマッテオ・ポリターノを始め「神だった」と崇拝する者は多い。
死去から5日後、喪失感を引きずりながら迎えたセリエA第9節のローマ戦は、マラドーナが愛した古巣クラブが真の意味で"今シーズンへの覚悟"を決めたゲームになった。
マラドーナの10番へのオマージュ
冥福を祈る試合前の黙祷に臨んだナポリの選手たちは全員、背番号10の入った白と水色の縦縞ユニフォームを着ていた。もちろん、マラドーナの母国であるアルゼンチン代表へのオマージュで、元々は10月末に誕生日を迎えたマラドーナの還暦を祝うためのサプライズとして企画されていたものだった。
今季のナポリは、FWビクター・オシムヘンを筆頭とする新戦力の加入や中盤の世代交代にともない、開幕から新しい戦い方を模索している。
首位をいくミランを迎えた第8節では善戦しながら、怪物ズラタン・イブラヒモビッチの2発に屈した。それでも、采配2年目のガットゥーゾ親分は「うちがミランに劣っているなんてことは決してない!」と試合後に熱弁をふるった。