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【引退】物議醸しがちDF岩下敬輔の“兄貴伝説” ガンバ降格も男気移籍、小野伸二や長谷川健太監督との縁
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byGetty Images
posted2020/12/04 17:01
“荒くれもの”なイメージがある岩下だが、ガンバや清水などでそのパーソナリティーは愛されたのだ
2014年5月の徳島ヴォルティス戦は、岩下が見せた勝利への執念に筆者も感嘆させられた一戦だ。
開始早々の2分に、相手との接触で鼻骨を骨折。「激痛だったし、血も凄かった。絶対に折れているなって思いましたけど、相手は徳島だし勝ち点3を取らないといけない試合。僕の交代枠で1つ使うのはもったいないと思ったんです」と岩下はフル出場。
そして、4日後の名古屋グランパス戦ではフェイスガード姿でピッチに立ったが、この試合でゴールを叩き込んだ大森も「相当痛いと思うけど、敬輔君はやっぱり男の中の男」と試合後にシャッポを脱ぐのだ。
クリーン……とは言い難いが、義理堅い男だった
「日頃、若手に言いたいことを言わせてもらっている分、僕も自分にプレッシャーをかけてます」
お世辞にもクリーンなCBだったとは言い難いが、そのファイティングスピリットと、義理堅さは所属チームの仲間とそのサポーターへ確実に伝わっていたはずだ。
サガン鳥栖を通じて発表したコメントの締めくくりは「負けんなよ、社長!」。自らの引退に際し、経営危機に喘ぐクラブのトップを励ますスタイルもまた、「兄貴流」。
パナソニックスタジアム吹田での第1号の退場者でもあるが、そんな不名誉よりも、ガンバ大阪で4つのタイトルを手にした「三冠戦士」こそが岩下に相応しい肩書きである。