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日光アイスバックス・福藤豊「僕が日本人初のNHLプレーヤーとして辛かった海外生活から得たもの」 

text by

林田順子

林田順子Junko Hayashida

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photograph byShigeki Yamamoto

posted2020/12/09 11:00

日光アイスバックス・福藤豊「僕が日本人初のNHLプレーヤーとして辛かった海外生活から得たもの」<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

自分で自分を苦しめていた

 NHLを経験して、自分自身に対する目は厳しくなりました。帰国してからは、期待に応えないといけないというプレッシャーも生まれました。もともと、息を抜くことができないタイプで、練習できないと不安だし、自分でうまく消化できないことがすごく多かった。そこまで考えなくてもいいだろうということでも深く考えてしまっていた。自分を追い込んで、ハードに練習をしすぎて、怪我をする。自分はこういう選手に見られたいと思って、本来の自分が思っていることとは違うことを発言したり、マイナスな部分を見せたくないと自分で自分を苦しめていました。

 アイスホッケーとうまく距離を取れるようになったのは、年齢を重ねて、結婚もして、子供が生まれてから。年齢的にもメンタル的にも、若い頃のようにはできないし、競技と離れる時間もうまく作れるようになったと思います。

 38歳にもなると疲れはやっぱり取れなくなりますね。連戦が続くと試合の終盤に響くので、ケアや食事にも気を付けるようになりました。昔はあまり休まなかったのですが、今は思い切って休むようになりました。

 アメリカにいた頃のような必死さはないですが、常に謙虚で、向上心を持ってアイスホッケーと向き合うという情熱は一切変わっていません。体力はなくなったかもしれませんが、その分、経験や技術でしっかりとカバーできますから。

やめたいと思ったことは一度もない

 今所属している日光アイスバックスは、キャプテンは僕よりも年下。一方で僕はベテランです。僕はチームというのは、キャプテンが作るものだと思っているので、発言には気を付けています。僕ぐらいの年齢になると、キャプテンと意見が違った時に、僕の発言が正しくなってしまう恐れがある。はっきりと意見を言うこともありますが、自分が発言するのは違うなという時は、我慢することもあります。発言の仕方やタイミングはすごく気を付けていますね。

 これまで色々と辛い経験もして来ましたが、アイスホッケーをやめたいと思ったことは一度もありません。結局、なんでも「これも経験なのかな」と思えるタイプなんです。それに実際、積み重ねてきた経験が今の僕を作っているのですから。

福藤豊

福藤 豊Yutaka Fukufuji

1982年9月17日、北海道生まれ。小学3年生の時にアイスホッケーを始め、18歳で高校生初の日本代表入り。2004年にNHLのロサンゼルス・キングスから日本人史上2人目のドラフト指名を受け、2005年に2年契約を締結、2007年にはリーグ戦初出場を果たし、名実共に日本人初のNHLプレーヤーとなった。2009-2010年はオランダリーグ、2010-2014年はアジアリーグアイスホッケーの日光アイスバックス、2014-2015年はデンマークリーグでプレーし、2015年9月から再び日光アイスバックスに所属。38歳となった今でも日本代表の正ゴーリーとして活躍している。

ナビゲーターの俳優・田辺誠一さんがアスリートの「美学」を10の質問で紐解き、そこから浮かび上がる“人生のヒント”と皆さんの「あした」をつなぎます。スポーツ総合誌「Number」も企画協力。

第137回:福藤豊(アイスホッケー)

12月11日(金) 22:00~22:24

アイスホッケー日本代表のゴーリー・福藤豊選手は18歳で初めて日本代表に選ばれ、24歳の時には日本人初のNHLプレーヤーに。38歳となった今でも日の丸の守護神として活躍しています。現在は日本では唯一のプロアイスホッケークラブの日光アイスバックスに所属。最年長という立場からも選手たちを牽引していますが、だからこそ気を遣うことも。年下の主将との意見の相違は、現場に混乱をもたらす可能性もある中で、年長者はどう立ち振る舞うべきなのか? NHLや海外生活などで培ってきた彼のコミュニケーション術に迫ります。

第138回:松井千夏(スカッシュ)

12月18日(金) 22:00~22:24

スカッシュの松井千夏選手は大学時代に競技と出会い、24歳の時に日本一に。その後日本初のプロ選手となり、日本最高峰の大会を計4回優勝。日本代表の中心としても活躍し、43歳となった今でもトッププレーヤーの一人です。昨年41歳で出産。半年後にはコートに復帰し、日本一を決める大会でメダルを獲得、周囲を驚かせました。番組では大好きなパン屋で束の間のオフを楽しむ彼女に密着。高齢出産を支えた考え方や、自分と重ね合わせ、励みにしてきた日本女子テニス界のレジェンド・伊達公子さんにまつわるエピソードなどもご紹介します。

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