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6年連続ドラフト入りの花咲徳栄高校 岩井監督「オヤジ、やっとドラ1を出すことができました」
text by
上原伸一Shinichi Uehara
photograph byShinichi Uehara
posted2020/11/21 17:03
ソフトバンクに1位指名された井上朋也(左)を握手をかわす花咲徳栄高校の岩井隆監督。同校として初の「ドラ1」となった
岩井監督がドラフト後に訪れた場所
細胞が新しいフォームを覚えるまで、気が遠くなるほど同じ動作を繰り返した2年のオフ。その成果を発揮するはずだった、3年春のセンバツはコロナの影響で中止になってしまう。4月の緊急事態宣言発令後はチーム練習もできなくなり、全体練習が再開したのは6月22日だった。
しかし、この間に行った自主練習は井上にとっては新しいフォームと向き合う貴重な時間になった。
岩井監督いわく「フォームを変えるのは、それまで右手で持っていた箸を左手で持つようなもの」。井上がなんら意識することなく、ごく自然に左手で食べられるようになったのは、高校野球を引退してから。着手から1年近く経っていた。
井上は出場が決まっていた3年春のセンバツがなくなり、8月の交流試合でも無安打と、最終学年では全国の舞台でアピールができなかった。ただ、そうした中でのドラフト1位。岩井監督は「スカウトの方が、ソフトバンク球団が、井上の能力をよく見てくれていたおかげ」と感謝の言葉を口にする。
ドラフトが終わると、岩井監督はドラフト前にも訪れた稲垣氏の墓前へと向かった。そしてこう報告したという。
オヤジ、やっとドラ1を出すことができました。“稲垣一門”の理論が認められました――。