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ロッテ絶対不利のCSでも…美馬学は“ソフトバンクキラー”「チームを背負ってるから、必死(苦笑)」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2020/11/14 11:00
今季19試合に先発し10勝を挙げている美馬。そのうちソフトバンクから5勝を挙げている
薄々感じていた「自分が勝ちたいより…」
美馬が「僕が勝てば」と言っていたように、登板する試合すべてで勝利投手になることを目指すのは、先発ならば当然である。しかし、美馬にとって何より重要なのは、「登板した試合でチームが勝つ」ことだ。
初めて2桁勝利を達成した17年から、薄々感じてはいた。
というのも、この年は前半戦で7勝を挙げながら、後半戦では4勝止まりだったからだ。「2桁勝利」という壁を越えられたことへの達成感はあった。反面、振り返ってみると「すごくいいシーズンと言いづらい部分もあった」と、美馬は述懐していた。
「チームが勝てばいい」
その境地に到達したのは、昨年のシーズン終盤だった。
前半戦で5勝しながら、後半戦は勝ちあぐねた。まるで17年の再現とも言える悪循環のなか、美馬は当時のパフォーマンスと感情を思い返しながら、その現実を肯定的に捉えたというのだ。
「本当は勝ちたいです。チームと僕にも勝ちがつけばベストですよ。でも、そればっかり考えてゲームを壊したら意味ないじゃないですか。だから『自分が勝ちたい』より『チームを負けさせない』って思うようになったんです。追いつかれても逆転は許さない。そこは強く意識するようにはなりましたね」
結局、後半戦は3勝に終わった。2桁勝利も逃したが、シーズン後の美馬には17年には得られなかった手応えがあった。
しみじみと漏らしていた言葉が蘇る。