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ロッテ絶対不利のCSでも…美馬学は“ソフトバンクキラー”「チームを背負ってるから、必死(苦笑)」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2020/11/14 11:00
今季19試合に先発し10勝を挙げている美馬。そのうちソフトバンクから5勝を挙げている
「なんか、抜け出せたような気はします」
自らの勝敗がチームの趨勢を占うと理解しながら、勝ちよりも負けないことに重きを置く。この意識の転換によって、美馬という投手の成熟度は、確実に色濃くなった。
それを証明したのが今季だ。
自身2度目の2桁勝利となった10勝は、チームトップである。前半戦は5勝2敗、防御率4.95。後半戦も同じく5勝2敗ながら防御率は3.00と、楽天時代に課題としていた期間でこそ、安定感を示した。
登板した19試合のチーム成績は13勝5敗1分。「負けない」と腕を振り続ける男は、移籍1年目からロッテ投手陣の強力な地盤となり、チームに勝利をもたらしたわけである。
ソフトバンクは5勝1敗の“お得意様”
4年ぶりのCSの相手は、王者ソフトバンク。今季5勝1敗、防御率2.70と、美馬が最も得意とするチームだ。
今年はコロナ禍の影響で、レギュラーシーズンと同じようにCSも4試合に短縮される。パ・リーグ優勝のソフトバンクに1勝のアドバンテージが与えられるため、ロッテは4戦中3勝が絶対条件と不利な戦いを強いられる。
だが、美馬が投げ、ロッテが勝てば何かが起きる。
勝利の女神がロッテに微笑み、パ・リーグの真の覇権争いは混迷するかもしれない。
10年前に球界を席巻した、あの動乱と歓喜。
下克上の足音は、少しずつ近づいている。