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悪夢の0-9惨敗も今や昔? サウサンプトンが“二日天下”でもプレミア首位に立てた理由
posted2020/11/15 06:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
“We are top of the league, we are top of the league!”
これは、プレミアリーグの試合会場でお馴染みのチャントの1つだ。
まだ1年も経っていないとは思えないほど昔のように感じるが、観衆で埋まるスタジアムが当たり前だったイングランドのトップリーグではシーズン開幕直後に、中小クラブや後半戦で優勝争いを演じるビッグクラブのサポーターが、国内サッカー界の頂点に立つ快感をスタンドで歌っていたものだ。
今季の第8節初日となった11月8日、2-0で勝利したホームでのニューカッスル戦後に首位に立ったサウサンプトンのファンも、無観客試合が続く状況でなければ、セント・メリーズ・スタジアムで陽気に「リーグ首位だ!」と連呼していたことだろう。
その合唱に、三日天下は覚悟の上という自虐的ユーモアが混じっていたであろうことも想像に難くない。
実際のところは“二日天下”だった。同節の10試合が終わると、好調レスターに首位を明け渡し、トッテナムとリバプールにも抜かれて4位まで順位を下げている。それでも、ファンにとっては上々の立ち上がりと言える。
「ファンは、順位表を写真に収めたりして」
サウサンプトンは、1992-93シーズンに始まったプレミア史上で29番目の首位経験者。つまり、今季までの28年間に所属した計49クラブのうち、半数近くのクラブが知らないままの首位の快感を味わったことになる。
ラルフ・ハーゼンヒュットル監督はニューカッスル戦後にテレビカメラの前に現れると、この時点での首位の意義の薄さは認めつつも「ファンは、順位表を写真に収めたりして喜んでくれるだろう」と笑顔で語っていた。
そうしたファン心理は理解できる。個人的に贔屓のチェルシーが首位という嬉しさを初めて体験したのは22年前の12月のことだ。
当時ビッグクラブでも強豪でもなかったチェルシーは、首位とも縁がなかった。ところが、1998-99シーズンの半ば、ホームでのトッテナム戦で勝ち点3を奪えば、首位に浮上してクリスマスを迎えられる可能性が生まれた。