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“豚の頭”のような憎悪と熱狂なき無観客クラシコ 闘将セルヒオ・ラモスの偉大なしたたかさ
 

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吉田治良

吉田治良Jiro Yoshida

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photograph byGetty Images

posted2020/10/27 11:02

“豚の頭”のような憎悪と熱狂なき無観客クラシコ 闘将セルヒオ・ラモスの偉大なしたたかさ<Number Web> photograph by Getty Images

ここ数年のセルヒオ・ラモスの勝負強さには舌を巻くばかりだ。無観客のクラシコでも鮮やかに主役となった

カンプノウに熱狂があったなら

 もし、カンプノウにクレ(バルサ・ファン)の熱狂があったなら──。

 きっと、クレマン・ラングレにユニフォームを引っ張られて大袈裟に倒れた千両役者、S・ラモスのアピールは指笛にかき消され、VAR判定による決勝のPKもなかっただろう。それどころか、メッシに執拗なファウルを繰り返したカゼミーロは90分間ピッチに立っていなかったかもしれないし、逆にバルサにPKが与えられていた可能性さえある。少なくとも、マルティネス・ムヌエラ主審は巨大なプレッシャーに苛まれながら笛を吹くことになったはずだ。

 もし、カンプノウにクレの熱狂があったなら──。

 リードを許した終盤にセルヒオ・ブスケッツやジョルディ・アルバも下げ、次々とアタッカーを投入。結果的にダメ押しの3点目を奪われたクーマン監督の選手起用も、あるいは……。

例によってラモスはしたたかだった

 ただもちろん、無人のスタンドだけがバルサの敗因であり、マドリーの勝因であったわけではない。

 ヤングタレントの競演となったクラシコで際立ったのが、あの殺伐とした時代を生き抜いてきたベテラン、S・ラモスの特別な存在感。メッシが決定機を決めきれず、ブスケッツが衰えの色を滲ませる中、怪我から戻ったマドリーの偉大なカピタンは、ときに熱く、ときにクールにチームを統率し、公式戦2連敗で窮地に立たされていたジネディーヌ・ジダン監督のクビをつなげた。

 S・ラモスは例によってしたたかで、実に食えない男だった。そう、カンプノウにクレの熱狂があろうとなかろうと──。

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