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“豚の頭”のような憎悪と熱狂なき無観客クラシコ 闘将セルヒオ・ラモスの偉大なしたたかさ
 

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吉田治良

吉田治良Jiro Yoshida

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posted2020/10/27 11:02

“豚の頭”のような憎悪と熱狂なき無観客クラシコ 闘将セルヒオ・ラモスの偉大なしたたかさ<Number Web> photograph by Getty Images

ここ数年のセルヒオ・ラモスの勝負強さには舌を巻くばかりだ。無観客のクラシコでも鮮やかに主役となった

将来を見据えた若返りは着実に

 クラシコ史上2番目の若さとなる(21世紀では最年少)、17歳と359日でゴールを記録したA・ファティだけではない。この日のバルサのスタメンには、他にも新加入のペドリ(17歳)とセルジーニョ・デスト(19歳)という2人のティーンエイジャーも名を連ねていた。

 さらにフレンキー・デヨング(23歳)、途中出場のウスマン・デンベレ(23歳)とトリンコン(20歳)、ベンチのリキ・プッチ(21歳)らも含めれば、登録メンバー23人中、23歳以下の若手が11人。開幕前は何かと批判的な見方をされていたクーマン監督だが、未来を見据えた若返りは着実に進んでいる。

気の抜けた炭酸のような味わいに

 もっとも、いまだ自分の立ち位置を見つけられず、悩みが深まるばかりのアントワン・グリーズマンに代わって右サイドに抜擢されたペドリは、守備に追われる時間が長く、攻撃面ではインパクトを残せなかった。

 ボールに多く触れながらリズムを掴むタイプだけに、初スタメンを飾った前節のヘタフェ戦のように、中央で使われてこそ持ち味を発揮するのだろう。鋭いターンからのスルーパスは、たしかに幼い頃からの憧れだったというアンドレス・イニエスタを連想させる。

 右SBのデストも対面のビニシウス・ジュニオールの縦突破を巧みに封じたが、果たして10万人近いサポーターで埋まったカンプノウでも、重圧に飲み込まれることなく同様のプレーができたかどうかは分からない。

 一方のマドリーでは、バルベルデ(22歳)、ビニシウス(20歳)、ロドリゴ(19歳/途中出場)がピッチに立ち、ベンチにもアンドリー・ルニン(21歳)、エデル・ミリタン(22歳)、ルカ・ヨビッチ(22歳)といった若手が控えていた。

 本当なら新時代の幕開けを予感させるはずだったクラシコが、無観客試合ゆえにテンション不足で、どこか気の抜けた炭酸のような味わいになってしまったのが、返す返すも残念でならない。

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