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“豚の頭”のような憎悪と熱狂なき無観客クラシコ 闘将セルヒオ・ラモスの偉大なしたたかさ
posted2020/10/27 11:02
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph by
Getty Images
バルセロナの敗因は、物議を醸した疑惑のVAR判定でもロナルド・クーマン監督の刹那的な采配でもない。空っぽのカンプノウ──。クラシコ史上初めて無観客での開催となった寂寥感漂う舞台装置こそが、最大の敗因だった。
クラシコから、狂気や憎悪が消えて久しい。“ペセテーロ”(守銭奴)ルイス・フィーゴめがけて豚の頭が飛び、ジョゼ・モウリーニョがティト・ビラノバに目潰しを食らわせ、悪童ペペがピッチに倒れたリオネル・メッシの手をしらじらしく踏みつける。
そんな殺伐とした時代は歴史の年表の中に埋もれてしまった。観光ツアー客が大挙して押し寄せるようになった近年のクラシコに、一昔前のような血なまぐささはない。
ほとばしるパッションがなかった
ただ、狂気は薄れても、ほとばしるようなパッションだけは、いつの時代も変わらず息づいていたと思う。バルサとレアル・マドリー、両チームのすべての関係者がクラシコを特別な一戦だと理解していたし、選手たちは、少なくとも他の試合とは比べ物にならないテンションでピッチに立っていたはずだ。
しかし、2020年10月24日に行われたコロナ下でのクラシコに、パッションはなかった。脳内にアドレナリンを分泌させ、ファイティングスピリットを沸騰させてくれる“着火剤=スタンドの声”がなかったからだ。上空を飛ぶテレビ中継用ヘリコプターの飛行音も、緊迫感ではなく、むしろ侘しさを倍加させるばかりだった。
ヨーロッパに、新型コロナウイルスの強烈な第2波が押し寄せている。いまさら無観客試合の味気なさを嘆いても仕方がないと分かってはいるが、実際に観客不在で熱を失ったクラシコを目にすれば、なおさらコロナ憎しの思いは募る。