ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
87人中84番目、DeNA佐野恵太が振り返る“ドラフト当日”「人生で一番苦しくて長い時間でした」
posted2020/10/26 11:03
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
KYODO
運命を決める1日――。
横浜DeNAベイスターズの佐野恵太は、ドラフト会議が行われた4年前の10月20日のことを今でも鮮明に覚えている。
「まず明治大学野球部の恒例行事である、寮の裏山にある神社に参拝に行くんです。で、食堂だったかな。プロ志望届を出した選手と4年生全員、そして善波達也監督(当時)、部長、コーチたちとドラフト会議を待ちました」
昨日のことのように脳裏に浮かぶ情景。緊張と弛緩の連続。時間の流れを遅く感じた、人生で一番濃密な1日だった。
87人中84番目指名が「チームの大黒柱」に
今シーズン、DeNAの四番・キャプテンに大抜擢され、予想をはるかに上回る活躍を見せている4年目の佐野。シーズンも残りわずか、首位打者のタイトルも夢ではない位置につけている。
押しも押されもせぬチームの大黒柱に成長した佐野ではあるが、彼という選手を表現する上で常に語られるのが2016年のドラフト会議において9巡目で指名されたことだ。支配下登録選手としての指名では全体で87人中84番目、セ・リーグでは最後の指名だった。下位指名ながらトップシーンで躍動する佐野の姿は、ドラフト会議の醍醐味を感じさせてくれる。
幼いときからプロ野球選手になりたいという夢はあったが、その想いが具体化したのは明大に入学してからだという。佐野は名門の広陵高校出身だが、当時はまだイメージできなかったという。
「僕としてはレベルの高い大学で、しっかり活躍してからプロに行きたいという思いがあって。憧れは明治大学で、高2の春ぐらいに監督さんに明大で野球がしたいですと伝えていました」
縁があって明大の善波監督が佐野を初めて見たのは高3の春だった。やはりバッティングに目がいったという。ヘッドを効かせた特徴的なスイングとインパクトの強さ。大学で技術をしっかりと磨いていけば、いい選手になると確信した。