欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
「僕がサッカー以外に手を出すのは…」ブンデス最年長・長谷部誠36歳が語った“ある決断”
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2020/10/17 20:00
今年36歳の長谷部はブンデスリーガ最年長選手として、開幕戦からスタメン出場を飾っている
「夢見ることもできない環境にいる子どもたちが世界にはたくさんいるということ、そして、そんな彼らの支えになるための活動があるということ、その手助けは誰でも簡単にできるということ……もっともっと、日本の方々に知ってもらいたい。それが僕のやるべき社会貢献だし、僕が最終的に目指すところなんです。ヨーロッパで暮らしていると、こちらの選手や一般の方々の社会貢献や寄付に対する行動力を強く感じます。そこが日本の感覚とは違うなと思うんです。だから、そういう部分でも、もう少し、日本の方々に知ってもらって、行動してもらえたらと思っています。サッカーをやめたらどうするのかはわからないけれど、今後何をするにしても、社会貢献は忘れずに続けていきたいと考えています」
何度裏切られても、サッカーへの情熱は変わらない
ここ数年は、フランクフルトとの選手契約は単年契約が続く。負傷も含めて、戦力とならなければ、即引退になってしまうかもしれない。しかし、サッカーへの情熱や愛情は年々高まっていると長谷部は笑う。
「たとえば、シーズン前のハードなトレーニングの翌日は筋肉痛がある。昔よりも、今のほうがそれを強く感じるけれど、朝目が覚めて、起き上がるのも辛いみたいな筋肉痛や身体の重さを愛おしいと感じるんです。トレーニング中に『キツイなぁ』って思いながらも、『あと何回これを感じられるのかなぁ、いいなぁ』って思っている。ヤバいでしょう?(笑) 自分のなかで無意識にあと何年できるのか、どれくらいできるのかと考えたりはしているんだけど、年々、サッカーに対する愛情、情熱は高まっている。サッカーには何回も裏切られてきたけれど、それでも、自分のほうへ寄せようとするんです。サッカーで味わう喜びやサッカーでしか得られないもの、快感があるから」
裏切られることをわかっていながらも、求めることを止められない。だからこそ、サッカーに情熱を注ぎ、対峙しなければならないと思っている。
「ここまで長くプレーできたのは、いろいろな巡り合わせがあったから。誇りに思うし、感謝もしている。同時に簡単なことばかりでもなかった。サッカーに関して言えば、9割が大変なことで、喜びや楽しみは1割くらい。困難、苦しみに一歩一歩立ち向かい、耐えて、歯を食いしばって、しがみついて、コツコツコツコツと積み重ねてやってきました。自分のキャリアに関しては、すべてが想定外。プロになるというところからね。他のリーグに挑戦したいと思っていた時期もあるけれど、オファーがなかったり。だから、これが本当に自分の望んでいた道なのかって言われると、そうとも言い切れない。
ただ、人生なんてそんなもんじゃないですか? 望んだとおりすべてが行くわけじゃないから。他の国へ行っていたら、これだけ長くサッカーができていなかったかもしれないし。だからこれが、僕の運命なんだと。運命は自分が引き寄せたものだと思うし、そこのところでは誇りに思います」
折り合いをつけながら、バランスを取りながら、日々と向かい合い歩む長谷部誠のサッカー選手としてのキャリアはまだ続く。その先が長くなかったとしても、「今」にすべての情熱を注ぎながら。