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「僕がサッカー以外に手を出すのは…」ブンデス最年長・長谷部誠36歳が語った“ある決断”
posted2020/10/17 20:00
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
Getty Images
「日本ユニセフ協会親善大使としても、様々な事をこの機会に勉強しています。手洗いの重要性。世界の約4割、30億人が家で水と石鹸で手を洗うことが出来る環境にありません。手をしっかりと洗うことが出来る環境にある人はきちんと丁寧に洗って感染拡大を防ぎたいですね」
長谷部誠は今年3月18日、自身のSNSでそう発信した。3月13日にブンデスリーガの中断が決まっている。その後、新型コロナウイルスは世界中で感染拡大し、一旦は落ち着きを取り戻したかに見えたが、再び、その猛威が広がろうとしている今、このメッセージを思い出した。
まだ、外出制限措置などが実施される前のこの時点で、長谷部が「家で手を洗うことができない人たち」の存在に心を寄せたのは、彼がその現場に足を運んだ経験があるからだ。
サッカー選手として、ユニセフ親善大使として
長谷部とユニセフとのつきあいは長い。
最初の出会いは2007年の頃。飛行機の機内で配られた「ユニセフのパンフレット」がきっかけだったという。「なにか行動を起こしたい」と思いながらも、恥ずかしさや自己満足じゃないのかというジレンマが過去にもあったと話す長谷部だが、こういう小さな行動が、世界に届くことを改めて認識したのだ。
そして、同年からマンスリーサポート・プログラムに参加、2010年以降CM出演なども行っている。2011年には東日本大震災で被災した幼稚園再建支援として、100万部を超えた自書『心を整える。』の印税などを寄付したことも有名だ。2016年には日本ユニセフ協会親善大使に就任し、2017年にはエチオピア、2018年にはギリシャ難民キャンプ、2019年にはバングラデシュのロヒンギャ難民キャンプなどを訪問している。
「世界中のいろんな場所に足を運ばせてもらって、そこで目の当たりにする信じられないような現実があります。僕は日本に生まれて育ち、今はドイツで暮らし、GDPが世界で3位や4位の国でしか生活していない。裕福な場所で暮らしていたら、絶対に感じることができないことを感じ、『同じ地球上にこういう場所があるんだ』と非常に考えさせられるし、ひとりの人間として学ぶことがあります。
でも、ただ学んだだけでは意味がないので、それを多くの人に伝えていかなくちゃいけない。大前提としてユニセフ親善大使は少しでも多くの方々に、世界の厳しい環境で生活している子どもたちのことを知ってもらい、行動してもらうという使命があるわけですが、そういう意味でいうと、自分の発信力というのは、弱いなと感じています。そこでの活動に関しても、実は葛藤があります。もっともっと発信しなくちゃいけないというのと、今のバランスを崩すのはちょっと違うなというのがあるので……」
長谷部の話す「バランス」とはいったい何なのか? それは「サッカー選手」とのバランスについてだ。