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「僕がサッカー以外に手を出すのは…」ブンデス最年長・長谷部誠36歳が語った“ある決断”
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2020/10/17 20:00
今年36歳の長谷部はブンデスリーガ最年長選手として、開幕戦からスタメン出場を飾っている
「ここ数年、スポーツ選手はその競技だけをやっていればいいという風潮じゃなくなっている。競技以外にいろいろなことをやるのは悪いことじゃないし、良いことであるべきだと思っています。でも、その前に己を知らないといけない。サッカーをやりながら、ビジネスをやったり、ソーシャルメディアでの発信だったり、そういうことができる器用さが、自分にあるのかを知らなくちゃいけないと思うんです。そこを間違うととんでもないところへ行くと思うから。それぞれのパーソナリティでいろいろあると思うんですけど、まずは自分を知るところから始めていかないと。
人によってキャパシティ、器の大きさは異なる。僕のキャパシティで考えると、情熱がサッカーに向いているから、これだけ長くプレーできているんだなというのが、持論なんです。自分のスタンスとして、いろんなことをやっていたら、サッカーを長くできなかったと思うから」
この“情熱のバランス”こそが、冒頭で紹介したユニセフ親善大使としての活動における葛藤に繋がっているのだろう。それでも、「世界で困難な状況にある子どもたちのために」という想いが薄れるわけでもない。長谷部は長谷部のやり方で、サッカーファンが「世界で困難な状況にある子どもたち」へ手を差し伸べる機会を提案し続けてきた。
長谷部が考える「社会貢献とは」
自ら立ち上げたプロジェクトに対して、応援してくれる人から世界の子どもへの支援を募る「フレンドネーション」というプログラムに長谷部は過去3度参加。昨季は、「2019-20シーズンのブンデスリーガ公式戦で、222キロを走る」というもの。生まれた静岡県藤枝市から、「サッカー選手になる夢」を叶えた埼玉スタジアム2002までの距離が222キロだったことに由来している。残念ながらリベロでプレーする長谷部の走行距離は短く、リーグ公式戦走行距離は219キロにとどまったが、残りの3キロは自主トレ中に走ったと報告された。今夏も、子どもたちのために「ChildhoodChallenge」に参加するなど、新型コロナウイルスで苦しむ開発途上国や貧困層への支援を続けている。
寄付金が世界の子どもたちの暮らしをより良くする力になることはもちろんだが、こういう活動によって、人々の興味を集め、意識を変えることにつなげたいという想いが長谷部にはあるはずだ。