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“ミスター”から受け継ぐ帝王学 阿部慎之助ヘッド代行をあえて自由に動かせた原辰徳監督の思惑
posted2020/10/02 17:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
KYODO
15日間の旅は終わった。
「とにかくチームが勝ち越せたんで、凄く嬉しい気持ちですし、色々と勉強させてもらった。こういうのを二軍でも、自分の中で役立たせられるようにやっていきたいですね」
10月1日のマツダスタジアム。
5対3で広島を振り切った試合後、巨人・阿部慎之助ヘッドコーチ代行は15日間の使命を終えて淡々とこう旅の感想を語った。
「すごく色々なことを考えないといけないな」
突然の一軍招集。
それは9月16日の午後2時前のことだった。
元木大介ヘッドコーチがこの日の朝に体調不良を訴え、病院での検査の結果、虫垂炎であることが判明。入院して手術することになった。
東京ドームで元木ヘッドがそのことを原辰徳監督に報告したのが、午後1時半過ぎ。同ヘッドの一時離脱を了承した原監督が、すぐに決断したのが阿部二軍監督のヘッドコーチ代行としての一軍招集だった。
原監督から連絡を受けた阿部二軍監督は、すぐさま当日に予定された平塚での二軍の試合を村田修一野手総合コーチ(この時点で二軍監督代行)に託すと、そのまま東京ドームの練習に合流。そして夜には阪神との試合でベンチ入りを果たした。
「一軍の試合を指導者として見るのは初めてだったし、すごく色々なことを考えないといけないなと思いながら、ずっと見ていました。あの目線からだと難しい部分は感じますし、元木ヘッドが戻るまで、足を引っ張ることがないようにやれればいいし、できることはやっていきたい」
阪神戦の試合後に語ったヘッド代行としての“決意表明”。その言葉通りに阿部慎之助ヘッドコーチ代行は、臆することなく一軍ベンチで動き回った。