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『ハイキュー!!』のおかげで浸透中? バラバラなバレー用語に一石を投じた名将の存在 

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市川忍

市川忍Shinobu Ichikawa

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posted2020/09/28 07:00

『ハイキュー!!』のおかげで浸透中? バラバラなバレー用語に一石を投じた名将の存在<Number Web> photograph by AFLO SPORT

『ハイキュー!!』が参考にしたという『バレーペディア』は、名将アリー・セリンジャーから影響を受けたものだった

『ハイキュー!!』が参考にした文献は?

 こうして『ハイキュー!!』に専門用語や、戦術の名前が登場するたびに、着想はもとより、用語についての知識を作者はどうやって仕入れたのかという疑問が浮かんだ。そして「参考にしたのではないか」とバレーボール関係者の間でささやかれていたのが、日本文化出版から発行された『バレーペディア』(2012年改定版)である。

『バレーペディア』の発刊に携わり、当時編集委員長を務めた日本バレーボール学会会長・静岡大教授の河合学氏に話を聞いた。

「そもそもバレーボール学会の中で『用語を整理しよう』という提案は今から20年くらい前に出ていました。当時、バレーボールの技術がどんどん上がってきている中で、用語が対応できてない。一度、きちんと整理したほうがいいのではないかということで制作しました。まず2005年にバレーボール学会の中に用語検討ワーキングというグループを作り、ありとあらゆるバレーボールに関わる用語を集め始めました。そのときには確か350くらいの用語が集まったと記憶しています」

 その後、15周年を迎えるバレーボール学会の記念行事のひとつとして、2010年に用語集の発行が決まる。こうして発刊されたのが『バレーペディア』の初版本だった。

「当時は誰にバレーボールを教わったのか、どこでバレーボールをプレーしてきたかによって、プレーの呼び方がバラバラでした」(河合氏)

レシーブ、キャッチ、カット、パス

 たとえば相手のサーブをレシーブする動作は、今でこそ「レセプション」と統一されつつあるものの、以前は「レシーブ」「キャッチ」「カット」「パス」など様々な呼び方があり混乱を極めていた。男子と女子、大学と実業団などで使う用語が違うため、記事を書く際、校正する際には幾度も頭を抱えたものだ。河合氏は続ける。

「当時は毎年のように国際大会がテレビで放映されていまして、解説をされるかたの使う用語もバラバラ。まずは、それを何とかしないと言葉は統一されないだろう、と。当時はリードブロックのシステムも正しく理解している人が少なかった。理解して、みんなで正しいバレーボールをやりましょうという思いがありました」

 そして、バレーボール学会のワーキンググループが編集作業を進める上で、最も参考にした文献が、1993年にベースボール・マガジン社が発行したアリー・セリンジャー著による『セリンジャーのパワーバレーボール』だったという。

【次ページ】 初めて見る用語がいっぱい

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