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『ハイキュー!!』のおかげで浸透中? バラバラなバレー用語に一石を投じた名将の存在
posted2020/09/28 07:00
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
AFLO SPORT
累計発行部数4000万部超えのヒットを記録した『ハイキュー!!』が2020年7月、惜しまれつつ週刊少年ジャンプでの連載に終止符を打った。2012年2月に登場して以来、8年半に渡り多くのファンを魅了してきた連載の終了に、コミックだけにとどまらずアニメ、演劇などさまざまなカテゴリーの『ハイキュー!!』ファンからは別れを惜しむ声があがった。
原作者・古舘春一氏による高校のバレーボール部を題材とした『ハイキュー!!』は、主人公の日向翔陽やチームメート、対戦相手を含めた登場人物それぞれが、バレーボールという競技を通じて成長していく姿を描いた物語だ。個性的な登場人物がときにはぶつかり、ときには挫折を味わいながら絆を深めていく。
その様はバレーボールファンだけではなく、バレーボールにさほど興味のない読者の胸にも強く響いた。
そして『ハイキュー!!』は、これまであまり語られることのなかったバレーボール競技の特性にもスポットライトを当てた。スピーディーな試合展開の中で数々の戦術が遂行され、高度な読み合いが繰り広げられているという、バレーボールの持つ隠れた魅力を伝えてくれた。難しいとされているバレーボールの戦術や専門用語を台詞や物語の合間に自然に挟み込み、主人公らと一緒に読者がバレーボールを理解していくよう仕向けた構成の手法は見事だった。
バレー用語の普及に大きく貢献
たとえば『ハイキュー!!』の41話「2回戦突入」では、対戦相手である伊達工高のリードブロックシステムについて、登場人物がこのような台詞で触れている。
『今までの対戦校はコミットブロックつう、相手をある程度予測して飛ぶブロックが多かったけど伊達工は徹底したリードブロック。トスがどこに上がるか見てから跳ぶってことは、囮にはなかなか引っかかってくれないつーことだ』
このほかにもアタックの始動の早さを表す「ファーストテンポ」やトスの種類を表す「ダイレクトデリバリー」など、連載スタート当時にはまだ指導者やプレーヤーにも浸透していなかった専門用語を、登場人物に生きた言葉として語らせた。それによりバレーボールの専門用語は『ハイキュー!!』の読者を中心に瞬く間に広がった。
バレーボールの専門用語の普及に大いに貢献したと言っていいだろう。