だが厳しいプロの世界。ちょっとでもコンディションを崩し、大量失点でもすればファームへ落ちることもある。まだ1年目、信用や実績といった部分で確立したものがないだけに、その可能性は常につきまとう。危機感は持っているのかと尋ねると、伊勢は目に力を入れた。

「僕としてはあまり下を見ないようにしています。1人のバッターをどう抑えるのか。どんな投球をすれば自分の力を発揮できるのかに集中したい。一番嫌なのは、後悔をするピッチングでファームに落ちること。僕のなかで逃げのフォアボールだけは絶対にしたくないという思いがあるのですが、決して後悔しないためにも攻めるという姿勢だけは絶対に失いたくないと思います」

「攻める姿勢だけは絶対に失いたくない」

　勇敢な若者はどのように未来を切り拓いていくのだろうか。リリーバーの現場は言うまでもなく過酷だ。誰もが心と肉体をすり減らしながら、それでも気持ちを奮い立たせマウンドへと向かっていく。もしかしたら若く気丈な伊勢がブルペンの中心になる日はそう遠くないかもしれない。

「まずは勝っている場面、チームが苦しい状況で簡単に抑えられるピッチャーを目指したい。そして三嶋さんのように、いずれはセットアッパーやクローザーを任されるような力をつけたいですね」

　熱いハート、うなるストレート、伊勢が将来の守護神候補であることはまちがいないようだ。