フランス・フットボール通信BACK NUMBER
《小柄な選手世界歴代ベスト10》1位はマラドーナ、2位はメッシ、では3位は…?
text by
パトリック・ウルビニPatrick Urbini
photograph byL’Équipe
posted2020/09/28 17:00
左からシャビ、マラドーナ、コパ、メッシ。
ブラジルサッカーが真似してきたガリンシャ
作家のオリビエ・グエズは自身の著作《Éloge de l’esquive(『かわすことへの賛歌』の意)のなかでブラジルの悪党たちについてこう語っている。「穢れの王」は巧みにルールを欺き、DFたちと即興で戯れると。
「彼らはペテン師であり札付きのエゴイストであり挑発者でもある。ドリブラーこそは、サッカーにおける真の悪党だ」
だが、同時に彼らは、ピッチの上の宝石でもある。
ガリンシャのような特徴を備えた選手が他にいるだろうか。169cmの体躯。左脚は外側に歪み、子供のころに手術を受け短くなった右足は内側に歪んでいる。他の誰にも真似のできないドリブルは光り輝き、即興性に満ちていた。本能的なプレーはマリーシアに溢れ、フェイント(常に同じドリブルとフェイント――左に切り返すと見せて右に向かう――にもかかわらず、マークするDFは必ず置き去りにされた)はもちろんシミュレーションや悪意に満ちたプレーすら彼にとってはサッカーの一部だった。
ブラジルサッカーはガリンシャの模倣者たち――巧に相手から身をかわしながら、グレイゾーンでマリーシアに満ちたプレーを仕掛ける選手たちで溢れている。多くはロビーニョのように単なる模倣に過ぎないが、なかにはロナウジーニョやネイマールのように、さらに高度なレベルに昇華させようと試みる(結果は失敗に終わるが)ものもいる。
ただ、誰もガリンシャほどに、ブラジルの民衆に心から受け入れられなかった。敢えてもう1人あげるならば、同じくファベイラ(貧民街)の出身で虚弱体質に生まれたロマーリオぐらいだろう。ただ、ロマーリオは、ガリンシャとは異なりすべての面で厳格さを保つことができたが……。
《小鳥のマネ(ガリンシャの愛称)》は人生を愛し、戦いと女性とサッカーを愛した。彼は自身をこう評していた。
「僕は人々に喜びを与えるために生まれてきた。そしてゴールをするために。僕がピッチに立つ理由はそれだけだ」
彼のような選手は、サッカーが今後未来永劫続いても二度と現れることはないだろう。