フランス・フットボール通信BACK NUMBER
《小柄な選手世界歴代ベスト10》1位はマラドーナ、2位はメッシ、では3位は…?
text by
パトリック・ウルビニPatrick Urbini
photograph byL’Équipe
posted2020/09/28 17:00
左からシャビ、マラドーナ、コパ、メッシ。
アルゼンチンにおける「マラドーナの影響力」
マラドーナは偉大だが、身長は165cmしかない。貧民街に生まれ、家の周りの空き地がテクニックとアグレッシブさ、巧妙さ、即興性を学ぶ格好の学校だった。崇拝していた選手はリカルド・ボチーニ(168cm)。インデペンディエンテで《神童》と謳われ、スペースを見出して創造力に溢れるパスを繰り出すセンスは卓越していた。
「ディエゴは遺伝学的に他よりも優れている」とセサルルイス・メノッティが述べているように、ゴムまりのように柔軟なマラドーナの身体には、半月板も靭帯も備わっていないかのようだった。天性の才能と過剰な情熱は、他の誰よりもアルゼンチンの魂を表していた。1986年メキシコW杯でチームメイトだったホルヘ・バルダーノは、彼のプレーをこう評している。
「溢れる才能と際立った個性、耽美性、悪知恵と要領の良さ、勇気、ショートパス……。それがマラドーナだ」
模倣によりテクニックが次の世代に伝えられるアルゼンチンのような国において、マラドーナの影響力は圧倒的だった。1990年代以降に輩出した数多の10番の選手たち――アリエル・オルテガやパブロ・アイマール、マルセロ・ガジャルド、ハビエル・サビオラらはいずれも多大な影響を受け、その遺伝子は最も完璧な形でリオネル・メッシへと受け継がれたのだった。
『お前はバルサの癌だ』とまで言われたシャビ
2000年代の終わりにスペインは伝統的なプレースタイルときっぱり決別し、情熱的かつ歓喜溢れるスタイルに敢然と移行した。基本理念はシンプルなプレーで、超絶したテクニックと知性を持ち、コレクティブな意識の高い選手をチームの軸に据えた。彼らはスピードがあるわけでもなく、戦いにも強くない。多くは小柄で先を読む能力に長け、的確なプレーを心得ていた。彼らが試合のリズムをコントロールしながら、ボールを保持して攻撃を組織化する。それがスペインの新しいスタイルだった。スペイン代表とFCバルセロナの頭脳であったシャビは、レキップ・マガジン誌のインタビューでこう答えている。
「あるとき僕は『お前はもう古い、ここにはいらないし有害だ』と言われた。『お前はバルサの癌だ』とまで言われたんだ! 170cmに満たない選手は当時は考えられなかった」
だがシャビは、考えるスピードが卓越していた。そして周囲で彼を支えたのが同様な体躯の中盤の選手たちであり、感覚的にも似通ったニセのセンターフォワードだった。彼らは時間と空間をコントロールして、流動的なパスワークから数的優位を作り出して相手のバランスを崩すのだった。
この小柄な天才の系譜に入るのは、シャビの代替不能なパートナーを長く務め、同等の流れを読む能力を持つアンドレス・イニエスタであり、非凡なパサーであるダビド・シルバであり、フアン・マタやダビド・カゾルラ、ヘスス・ナバスであった。そして最も新しく加わったのが、ラ・マシアから今季プロに加入した169cm、56㎏のリキ・プイグである。