「小笠原だけは気になります」

　中日の小笠原慎之介は、東海大相模高3年の夏に共に全国制覇を成し遂げた盟友だ。当時は小笠原が左のエース、吉田は右のエースとして切磋琢磨した。その年のドラフトで、小笠原は中日に1位指名され、吉田は5位でオリックスに入団した。

　小笠原はプロ1年目から15試合に登板し、初勝利も挙げた。当時、吉田はこう語っていた。

「他の同級生の活躍はまったく気にならないですけど、小笠原だけは気になります。しかたないですよね。やっぱりチームメイトだったし、一番の親友なので。一番いい刺激になります」

　2年目のシーズン終盤、吉田は日本ハム戦でプロ初登板初先発を果たすが、2回2/3を投げ6失点とプロの壁に跳ね返された。3年目は一軍登板がなく、小笠原との距離は縮まらない。

　しかもその頃から、オリックスは入団まもない若い投手が次々に活躍。山岡泰輔や田嶋大樹など社会人出身の選手や大学卒の選手だけでなく、山本由伸や榊原翼といった年下の選手が一軍で躍動する姿に、吉田は危機感を抱いた。

「年下の選手の勢いがすごかったので、ほんまにこれはマジでやらなあかんな、と思ったんですけど、（4年目だった）去年も4試合しか投げられなくて、まだまだだなと痛感しました」

シュート習得「もうやるしかない」。

　その4年目の終盤、二軍のコーチ陣に「シュートを投げたらどうだ？」と勧められた。

　高校時代から、吉田の一番の武器はスライダーだったが、「僕自身、曲がり球だけではしんどいなと思っていたし、コーチの方々とも、スライダーが悪くなった時にもう1つ何か欲しい、右バッターのインコースに投げられたら、という話になりました」。

　5年目になれば大学を卒業した同級生もプロの世界に入ってくる。その選手たちに負けるわけにはいかない。そんな思いもあった吉田は、「もうやるしかない」とシュートの習得に努めた。

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