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その日、内田は7回「鹿島」と言った。
最も印象に残ったCLの試合の後で。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2020/08/27 18:00
バレンシアを破り、長友佑都がいたインテルを破ってCLベスト4に躍進した時も、内田篤人の心には「鹿島」があった。
内田には貯まりに貯まったものがある。
内田がシャルケのユニフォームを来て最後にプレーしたのは2016年12月8日だった。それは約1年9カ月ぶりの復帰戦であり、ELのザルツブルク戦でもあった。ヨーロッパの舞台で内田と同じピッチに立った最後の日本人になった南野拓実はその夜、シャルケファンが内田に向けた感情を目の当たりにして、こう誓っていた。
「(内田に)シュートをブロックされたのは悔しいですけど、日本を代表するような選手が復帰したことは、とても嬉しいですし、少しでもマッチアップ出来て良かったというか……。逆に、僕も刺激をもらいましたね。僕も、『ファンから歓迎されるような選手になっていきたいな』と」
引退会見で、信頼するスポーツ報知の内田知宏記者の質問に、内田篤人はこう答えていた。
「自分の貯金をいくら持っているかも分かっていない状態なので、奥さんはそこら辺の心配は多少していましたけど、まぁ、なんとかなるでしょう」
とんでもない、「なんとなかなる」ではすまない。内田にはプロサッカー選手として、貯まりに貯まったものがある。
一生かかっても使い切れないほどの「信頼貯金」である。
内田がつないだ信頼は、この先、必ず返ってくる。チームメイトに丁寧に「つないだ」パスが、自分の足下に返ってくるように。