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CLも制した無敵の3冠バイエルン。
ドイツ「1強時代」はまだまだ続く?
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2020/08/27 20:00
各国クラブを完璧に叩きのめしてCL王者に輝いたバイエルン。3冠も納得の充実ぶりは来季も続くか。
2019年は「盟主終焉」と揶揄された。
世界的規模の新型コロナウイルス禍に苛まれた2020年、ヨーロッパ各国リーグとカップ戦は中断を余儀なくされ、再開後も大半が無観客試合、そしてチャンピオンズリーグなどは準々決勝以降セントラル方式の一発勝負を強いられました。
2019-20シーズンは未曾有の危機のなかでサッカーの新たな歴史が刻まれたわけですが、ヨーロッパチャンピオン、国内リーグ、カップ戦を合わせて3冠を達成した今季のバイエルンの道のりは、実は非常に険しいものでした。
ハンス・ディーター・フリック監督は、CL優勝後の記者会見で「(昨年)11月の新聞の見出しでは、『バイエルンは恐るるに足りぬ』という文字が踊っていた」と語りました。そう、僕自身も当時はそう思っていました。
だって、当時のバイエルンはフランクフルトのホーム、コンメルツバンク・アレーナで1-5の大敗を喫し、翌11月3日にニコ・コバチ監督が解任されたのですから。
また、そのフランクフルト戦では、DFジェローム・ボアテンクが迂闊なファウルを犯して前半早々に退場処分を下されてチームが窮地に陥るなど、これまでチームを支えてきた重鎮たちの能力に疑問符が付けられていた時期でもありました。
他にも、キャプテンのGKマヌエル・ノイアー、アカデミー出身のMFトーマス・ミュラーらがスランプ気味で、前シーズンにFWアリエン・ロッベン、FWフランク・リベリーという象徴的存在がチームを去ったことも相まって「世代交代必須」「盟主終焉」と揶揄されていたわけです。
既存選手の力をフリック監督が引き出す。
でも、ここから我々は「バンヤン」の不屈の強さを目の当たりにします。
コバチ監督の後を引き継いで、当初は暫定で指揮官の座に就いたフリック監督は、まずモチベーターとしての能力を存分に発揮して既存選手の能力を再び引き出しました。次の段階では現代サッカーのトレンドを突き詰めて「コレクティブに戦うスター軍団」という強固な組織を築き上げ、高らかにドイツ、そしてヨーロッパを制したのです。
フリック監督就任後のバイエルンの公式戦成績は、33勝1分2敗。2度の敗戦は就任後5戦目のブンデスリーガ第13節・バイヤー・レバークーゼン戦(●1-2)と、同第14節・ボルシアMG戦(●1-2)の連敗で、ドローはブンデスリーガ第21節・RBライプツィヒ戦(△0-0)です。
つまり今季のバイエルンはブンデスリーガ以外の公式戦は全勝でシーズンを終えたのです。まさに最強です。