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CLも制した無敵の3冠バイエルン。
ドイツ「1強時代」はまだまだ続く? 

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島崎英純

島崎英純Hidezumi Shimazaki

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photograph byGetty Images

posted2020/08/27 20:00

CLも制した無敵の3冠バイエルン。ドイツ「1強時代」はまだまだ続く?<Number Web> photograph by Getty Images

各国クラブを完璧に叩きのめしてCL王者に輝いたバイエルン。3冠も納得の充実ぶりは来季も続くか。

CL4強のうち3人がドイツ人監督。

 中断明け以降のCLをみると、バイエルンのハイプレスの強烈さが目を引きます。しかも、それをロベルト・レバンドフスキ、ミュラー、イバン・ペリシッチ、セルジュ・ニャブリ、キングスレー・コマン、フィリペ・コウチーニョといった実力者たちが献身的に実行するところに凄みを感じます。

 究極のコレクティブがチーム強化に繋がる傾向は、昨季のCL覇者であるリバプールや、クラブ史上初のCLファイナリストとなったパリSGのスタイルからもうかがえます。

 今季のCLで4強まで進んだクラブのうち、オリンピック・リヨンのリュディ・ガルシア以外の3人がドイツ人指揮官であることも、興味深い事象です。

 バイエルンのフリック、パリSGのトーマス・トゥヘル、そしてライプツィヒのユリアン・ナーゲルスマンは、それぞれ指導者としてのキャリアの道筋が異なりますが、リバプールのユルゲン・クロップを含め、現代サッカーのトレンドをドイツ人指揮官が牽引している点は着目すべきでしょう。

 現代サッカーでは、スター選手がチーム内でいかにコレクティブにプレーできるかが、好成績を上げる鍵になりつつあります。そこで監督に求められるのは先鋭的戦術、戦略はもちろんのこと、何より選手にチームプレーヤーとしての意識を備えさせるモチベーターとしての能力だと思います。

 バイエルンのフリック監督はその両面を兼ね備えていたからこそ今回、クラブ史上7季ぶりのトレブル(3冠)を達成できたのでしょう。

慧眼だったデイビスの左SB抜擢。

 フリック監督が上げたチーム内効果を幾つか挙げてみましょう。まずは既存選手の再評価です。キャプテンのノイアーやボアテンクに自信を取り戻させ、ミュラーには「お前はチームの核だ」と再認識させることで自覚を芽生えさせました。

 ボアテンクのパートナーには本来左サイドバックのダビド・アラバを抜擢してスピード対応を補完し、アラバに代わって19歳のアルフォンソ・デイビスを左SBのレギュラーに抜擢したのは慧眼でした。

 またヨシュア・キミッヒはフィリップ・ラームの再来と思えるほどにマルチロール化しましたし、ニャブリの突破力とゴールハント力はレバンドフスキに掛かる攻撃負担を軽減させるのに十分な武器となりました。そしてレオン・ゴレツカの鬼神の如き運動量と攻守のタスクワークは、チームスタイルの幹を成したと言えます。

 そんなバイエルンで目立ったのが、選手たちのクラブへの忠誠心ではないでしょうか。

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