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ガンバにまた10代新星FW唐山翔自。
ボールを引き寄せる嗅覚と大黒将志。 

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下薗昌記

下薗昌記Masaki Shimozono

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photograph byJ.LEAGUE

posted2020/08/21 08:00

ガンバにまた10代新星FW唐山翔自。ボールを引き寄せる嗅覚と大黒将志。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

“ガンバの10代有望株”と聞くだけでワクワクするのはサポーターだけでないはず。唐山翔自はどんな成長曲線を描くだろうか。

大黒、アデミウソンの動きに学ぶ。

 小学生の頃、やはりサッカーをしていた兄とともに壁にボールを蹴り、言わば遊びの中で生み出したメニューだが、唐山の目は真剣だ。

「技術の練習でもあるけど、目を慣らす練習でもあるんです」

 ペナルティエリア内で問われるのは「常在戦場」の心構え。いわゆる「QBK」は許されないことを唐山は知っている。そうしてフィニッシャーとしての技術を磨く一方で、唐山は今、プレーの幅を広げる作業に取り組んでいる。

 コロナ禍の影響でチームが活動の休止を余儀なくされた時期に、森下監督の勧めで繰り返し見た映像はガンバ大阪ユースの先輩にあたる大黒将志の動き出しだった。

「ジュニアユース時代はそれほど裏抜けに特化していたわけではない」と宮本監督が語るように、唐山は本来、オフ・ザ・ボールだけにこだわるスタイルではない。ユース時代はガブリエウ・ジェズスの動き出しやルイス・スアレスのポジショニングを参考にし、最近は身近なブラジル人FWを生きた教材にしているという。

「アデミウソン選手はやっぱり凄い。攻撃の作りに関わるところとか、縦パスが入って、相手を背負った時に絶対に相手の逆をつくところとか、凄く上手いなって。日頃からプレー動画集を見ています」

「点を決めたらOKみたいなところも」

 6月に開幕したJ3リーグでは開幕戦こそゴールを決めたものの、その後3試合は無得点である。

「勝てていない時期の試合を分析したら、前で張っているだけではボールは来ないし、自分が1回、攻撃の作りに関わって味方がフリーになったら、また動き出すという新しい形もやっていかへんと、なかなか点を取るのは難しいなと思っていたんです」

 アデミウソンに目を向けたきっかけをこう明かした唐山の柔軟性と謙虚さは魅力の1つだが、同時にストライカーならではの矜持にブレはない。

「FWは他のポジションとは違って凄く特殊。点を決めたらOKみたいなところもありますから」

 だからこそ、湘南戦で自己採点を問われた少年は、ためらうことなくこう言い切った。

「点を取って勝ったんで10点(満点)で」

 ボールは唐山を引き寄せる――。これから、何度もこんなシーンが待っているに違いない。

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