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ガンバにまた10代新星FW唐山翔自。
ボールを引き寄せる嗅覚と大黒将志。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/08/21 08:00
“ガンバの10代有望株”と聞くだけでワクワクするのはサポーターだけでないはず。唐山翔自はどんな成長曲線を描くだろうか。
シュート2本で2得点、持ってるな。
シュート2本で2得点という最高のデビュー戦に「自分は持ってるなと思いました」と今時の若者らしい率直な言葉を口にした唐山だったが、持っているのは決して運ではない。未来のエース候補は、才能に加えて努力する力を持ち合わせているのである。
ガンバ大阪U-23でJ3リーグに初出場した昨年7月28日の長野パルセイロ戦でもデビュー弾を決めている唐山は、「点を決めないと大好きなラーメンも美味しくない」とゴールへの執着心を見せ続けてきた。この1年間、ひたすら心と技を磨き続けてきたのだ。
湘南戦をテレビの前で見守ったガンバ大阪U-23の指揮官、森下仁志監督はキッパリと言い切った。
「思うようにいかないこともあって涙を流しながら踏ん張って、練習している姿を僕は見ている。そういう毎日があるからこそ、彼のところにああやってボールが来るわけだし、『持っている』と言える人間になれるんです。ただ、何もしないで今みたいな状況になっている訳ではないですから」
点が取れず試合中に涙が出たことも。
チームが始動したばかりの今年1月中旬のことだ。関西大学との練習試合に敗れ、無得点に終わった唐山は「俺は、大学生相手にも点が取れへんのかと思うと試合中にちょっと涙が出てきた」と悔しさを噛み締めていた。
もちろん試合後に待っていたのは森下監督からの愛の檄。指揮官と1対1で向かい合ってメンタル面のアドバイスを受けるなど、熱血漢の指導で心身をタフに磨き上げて来た。
J3リーグでは10試合で計8得点。数字だけを見れば及第点に見えるが、唐山自身は冷静に自らの立ち位置を見つめていたのが印象的だ。
「得点以外の部分を見たら平均以下のプレーやし、周りの選手が良かったら点を取れるというのではダメ」