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ガンバにまた10代新星FW唐山翔自。
ボールを引き寄せる嗅覚と大黒将志。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/08/21 08:00
“ガンバの10代有望株”と聞くだけでワクワクするのはサポーターだけでないはず。唐山翔自はどんな成長曲線を描くだろうか。
昨季J3で実感した大人の駆け引き。
ユース世代ではずば抜けた存在でありながらも、プロのスピードやフィジカルの強さに成長が頭打ちとなるルーキーは珍しくないが、唐山にとって大きかったのは昨年、2種登録の立場ではありながらも、そうしてJ3を経験できたことである。
昨季のJ3リーグでは終盤、ラーメンが美味しくない日々を味わった唐山だが、当時こんな感謝を口にしていた。
「J3も特にCBにはベテランが多いじゃないですか。その経験値はユースの選手よりも高いし、フィジカルももちろんですけど、駆け引きが全然違う。CBとCFはユースとは比べ物にならないので、本当にいい経験になっています」
自身もガンバ大阪U-23の元指揮官としてJ3リーグのレベルを知る宮本監督も言う。
「早くに大人の選手と対戦して何が足りないのか、何が通用するのか、というのを整理する時間になったと思う」
肩書きこそアマチュアだが、プロサッカーの洗礼をいち早く浴びていた17歳は1月の始動時から、フィジカルの強化にも取り組んできた。とにかく練習の虫である。
「予想より早く成長してきている」
宮本監督もまた、負けず嫌いな唐山の素顔を知る1人である。
「勝敗に対して負けず嫌いというか、悔し涙を流すこともあったし、ピュアなところもあった。とにかくサッカーが好きで練習時間が終わっても常にボールを触って、ドリブルの練習をしたりもしていましたしね」
宇佐美に似たサッカー小僧気質。
プレースタイルは異なるものの、唐山に感じるのは飛び級の先輩に当たる宇佐美貴史に似たサッカー小僧の気質である。
「僕は天才じゃない」と公言する宇佐美は抜群のキック精度を小学生時代からの努力で磨き上げてきたが、唐山の得点感覚もまた、単なる才能に頼ったものではなかった。
「2点目は自分の中でもすごく気に入っていて、(高木)大輔くんから来たボールをちょっと相手が触ってほんのちょっとズレて、バウンドも変わった中でしっかりとボールに足を当てることができた。自分の中では結構難しいシュートだと思っているので練習の賜物かなと思います」
湘南戦の2点目を自画自賛したのには訳がある。唐山はクラブ練習場に設置されているシューティングボードに至近距離から強いキックを繰り出し、その跳ね返りをボード近くに設置したネットに正確に蹴り込む練習を日課にして来たのだ。