相手が強くなれば「僕の強みが活かせる」。

　優勝、昇格、二桁得点……。

　岡崎のスペインでのシーズンを評価する声は、地元ウエスカのみならず、日本でも広がっている。しかしそれは、あくまでも2部での話。そのことは岡崎も重々承知している。

「2部から1部に上がれば、台無しになるというか、同じようにいかないのは覚悟している。それでも目標としていたことを果たせた手ごたえのあるシーズンだった。

　2部でできていた、きれいにビルドアップしてパスを繋いでというスタイルを1部でも貫けるのかと言えば、そんなに甘くはないはず。前線へのロングパスやルーズなボールを蹴り返すシーンも増えると思う。でもそういうときこそ、僕の強みが活かせるというイメージを抱いている」

まだ見ぬイタリアへ。

　しかしスペイン1部への昇格は、岡崎にとって決してゴールではない。彼の野心は、まだ見ぬ地イタリアへと続いている。

「『岡崎慎司の欧州最後の場所はスペイン1部』と思っている人は少なくないと思うんですけど、イタリアへの移籍は今も頭に描いています。だから僕のなかでは、『ここがスタート』なんです。目標があることが今の自分の生きがいであり、やりがいです。

　イタリアへ行くには、イタリアからのオファーが必要。そのためにはここで結果を残さないといけない。1年1年自分でつかみ取っていかないと、終わってしまう。もちろん、ウエスカを残留させることが一番ですけどね」

　ドイツのシュツットガルト。マインツ。プレミアリーグのレスター。いずれも岡崎が加入した時点では、中位以下のチーム状況だった。残留争いの経験もある。

　そして選手層や戦力で劣るチームでこそ岡崎の存在が輝くことは、彼の所属したチームが残留し、順位を上げ、プレミアのリーグ優勝をも獲得した「結果」が示している。

　目には見えない、数字には表れない「岡崎効果」を知らしめるためにこそ、目に見える「ゴール」が必要なのは、来シーズンも同じだろう。