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涌井秀章、菅野智之、石川柊太の
「1安打完封」を、もっと称えたい。 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byKyodo News(L)/Kiichi Matsumoto(R)

posted2020/08/06 15:00

涌井秀章、菅野智之、石川柊太の「1安打完封」を、もっと称えたい。<Number Web> photograph by Kyodo News(L)/Kiichi Matsumoto(R)

9回1死で惜しくも“ノーノー未遂”となった涌井秀章(左)。しかし1安打完封は菅野智之(右)や石川柊太とともに十分に快記録だ。

楽天の年度別完封数を見てみると。

 藤原は新人で走者1人だけの準完全試合。しかし完封はキャリアでこの1度だけ。2014年の則本も準完全。エース則本が2度にわたってあと「1」にまで迫りながら達成できなかったノーヒットノーランを移籍1年目の涌井があわや達成、という感じだったのだ。

 則本昂大が、これに刺激されて「次は俺も!」となるか、といえば筆者はそうならないのでは、と考える。楽天の投手起用はここ数年、大きく変わっているのだ。

 以下、楽天の創設以来の完封勝利数である。

2005年 1(有銘兼久)
2006年 3(一場靖弘2、有銘兼久)
2007年 3(青山浩二、田中将大、朝井秀樹)
2008年 8(永井怜2、岩隈久志2、田中将大2、ドミンゴG.、片山博視)
2009年 6(田中将大3、永井怜2、藤原紘通)
2010年 3(岩隈久志、田中将大、永井怜)
2011年 9(田中将大6、永井怜2、岩隈久志)
2012年 5(田中将大3、釜田佳直、塩見貴洋)
2013年 2(田中将大2)
2014年 8(則本昂大7、辛島航)
2015年 1(則本昂大)
2016年 1(美馬学)
2017年 3(則本昂大2、美馬学)
2018年 2(則本昂大、岸孝之)
2019年 1(弓削隼人)
2020年 1(涌井秀章)

田中将大24勝の2013年完封数は……。

 2006年に2代目監督となった野村克也は楽天投手陣の基礎を作ったと言えよう。

 近鉄のエースだった岩隈久志を先発の柱に据え、その背中を追いかけるように田中将大が台頭する。野村監督の基本は「エースが試合を作る」ことだった。ブラウン監督を挟んで就任した星野仙一監督も先発の柱に田中を据えた。その田中は2011年に6完封を記録している。

 しかし空前の24勝0敗という大記録を樹立した2013年の田中はわずか2完封。この年は完封よりも多くの勝ち星を稼ぐことに重点を置いたのだ。

【次ページ】 則本の完封数も減ってきている。

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