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バイエルンを変えたフリック監督。
悠々と国内2冠、CL優勝も現実的だ。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2020/08/07 20:00
リーグ、国内カップ戦で優勝して2冠。フリックのバイエルンはCLでも優勝候補の限りなく筆頭に近い位置にいる。
DF、MF、FWにボスを配置。
では、55歳の新指揮官はチームに何を持ち込んだのだろうか。
1つ目が、各ポジションのボスに下部組織出身者かドイツ人を配置し、チームの幹を作ったことだ。チームのキャプテンであるマヌエル・ノイアーが務めるGKを筆頭に、各ポジションは以下のようになっている。
DF:ドイツ語を公用語にする隣国オーストリアの選手で、バイエルン下部組織出身のダビド・アラバを左SBからCBへコンバート
MF:22歳でドイツ代表のキャプテンを任された経験を持ち、将来のキャプテン候補でもあるヨシュア・キミッヒを右SBからボランチに固定
FW:10歳から下部組織で過ごすドイツ人のトーマス・ミュラーをトップ下のレギュラーに再起用
三冠達成監督であるハインケスは、『キッカー』誌に寄せた手記の中でキミッヒとアラバの起用法を戦術面のキーにあげている。
キミッヒの中央固定について「この野心のある選手が、走力を表現することによって、さらなる運動量をチームに植え付けた」と褒め、アラバのCB起用についても「とても賢明だった。なぜなら現代サッカーにおいては、特別な能力を持ったCBが欠かせないからだ。彼は正確なパスでゲームを支配し、前に出たときには中盤に数的優位な状況を作ってみせる」と称えた。
また、アラバがCBにコンバートされたことで、本職は左ウイングだったアルフォンソ・デイビスが左SBで起用されて大ブレイクした。この19歳の市場価格が12億4000万円から74億4000万円まで5倍以上に跳ね上がったことからも、成長の度合いがわかるはずだ。
ミュラーも21アシストの新境地。
そして、30歳を迎えたミュラーも新境地を迎えた。フリックのもとでアシスト数を飛躍的に伸ばし、21アシストはもちろんキャリアハイだ。
ミュラーの得点力には定評があるが、アシストが増えたことでチームの得点への影響力がさらに高まった。前任のニコ・コバチ監督時代には、ゴールとアシストを合わせて120分に1回ペースだったが、フリックのもとでは83分に1回。1試合で1ゴール以上に絡む選手になった。
各ポジションのボスがチームの背骨となることで、抜群の安定感が生まれたのだ。