マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
市立和歌山の2年バッテリーが強烈。
小園健太と松川虎生の巨大な将来性。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySports Graphic Number
posted2020/08/07 07:00
市立和歌山の小園健太、松川虎生はまだ2年生。智弁和歌山の牙城を脅かす可能性があるバッテリーだ。
101kgの2年生キャッチャーがまたうまい。
市立和歌山の剛腕・小園健太を気分よく投げさせていたのは、これも2年生捕手・松川虎生(178cm101kg・右投右打)だった。
このサイズの高校2年生の捕手が、いったいどんな守備ワークを見せてくれるのか、すごく興味があった。
県内で常にトップレベルのチームだ。よほど動けなければ、「捕手」に据えるわけがない……。
そして、その通りの立派な「捕手」だったから驚いた。
無観客試合だから余計に響く、松川虎生の捕球音がすばらしい。
投手・小園健太の剛速球の球威をそのままミットへの「炸裂音」で表現し、小園の闘争心を、さらに奮い立たせる。
捕手は捕球音で投手を育てるんだ……松川虎生のキャッチングは勉強になる。
ショートバウンドに対する横の反応も、とても100kg以上ある選手の動きじゃない。
リズミカルな捕球→返球の連動も見事なものだし、スローイング時の下半身の弾力、あざやかなスナップスロー……2年生の夏の段階で、ディフェンスについてはケチのつけようがない。
バッティングのセンスも秀逸。
市立和歌山・松川虎生捕手は、もともと、豪快な長打力で評判が聞こえてきた選手だ。
この日の打順は3番。左足を前に蹴り上げるタイミングのとり方で最初の2打席は踏み遅れていたが、智弁和歌山のマウンドがエース・小林樹斗(3年・184cm86kg・右投右打)に代わった3打席目に、打ち方を変えてきた。
気持ち早めに左足を踏み込んで、目測140キロ後半の速球にタイミングを合わせ、ライト前にライナーで弾き返した。
この日の智弁和歌山・小林樹斗のピッチングは、ドラフト1位候補の明石商・中森俊介にも匹敵するほどの快投で、昨年とは一変していた。甲子園の「交流戦」でも話題になるだろうし、ドラフト上位のレベルに届いていることは間違いないだろう。
その磐石の投球に対抗するには、この打ち方しか他にない。「バッティングセンス」とは、こういうものだ。
あらためて、松川虎生から、「野球」を勉強させてもらった。
市立和歌山の投手・小園健太、捕手・松川虎生は、「驚きの2年生バッテリー」だった。
大きく修正するべき難点、欠点は見当たらない。
このまま、今のまま、あまりパワーアップだけに偏らず、見た目の数字ばかり欲しがらず、それ以上に、柔軟性とボディーバランスと瞬発力の養成に心を砕きながら、トレーニングを重ねていってくれたら……。
来年夏の「宿敵」との再戦が、今から楽しみでしょうがない。