“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
藤原優大が浦和と札幌に送った手紙。
思い出が詰まった埼スタで目指す夢。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/07/24 08:00
昨年度の選手権では決勝で涙を飲んだ青森山田DF藤原。悩み抜いた末、J1浦和への入団を決断した。
静岡学園FW加納に許した1点。
藤原にとって埼玉スタジアムは多くの思い出が詰まった場所でもある。昨季は選手権の準決勝、決勝。さらには高円宮杯プレミアリーグファイナルと、2年間で5試合を戦って4勝1敗の好成績を収めるなど、相性はいい。
だが、歓喜の味わってきたスタジアムは、あの苦い思い出が蘇る場所でもあった。
昨季、2連覇を懸けて臨んだ選手権決勝の静岡学園戦。ここで彼は一生脳裏に焼き付いて離れないシーンに遭遇した。
静岡学園を相手に2点を先行するも、前半終了間際に1点を返されて迎えた61分。藤原と同じ2年生の静岡学園FW加納大にクサビが入った瞬間、マークについていた藤原の反応が一瞬遅れた。
加納がボールを受けて鋭く反転した時、シュートブロックに切り替えたが、右足を出すべき場面で咄嗟に出たのは左足だった。
「あのシーンには2つのミスがあって、まず加納選手にクサビが入った瞬間に正面に立とうとしたのですが、一瞬でターンをされて付いていけなかった。そこで『やばい』と思って焦ってしまったことで、一番遠い場所まで届く右足ではなく、相手に背を向ける形で左足ブロックにいってしまった。そのせいで足にボールが当たることなくゴールに飛んでいってしまった」
初心に返ることができる1枚。
選手権のレポートを掲載したコラムで、その瞬間をとらえた写真をメインカットに使用した。藤原はこの写真を見て、自分のミスと未熟さを改めて感じたという。
「完全に及び腰のようになってシュートの瞬間を見ていないし、加納選手のシュートの軌道を目で追ってしまっている。この写真を見る度に、あのシーンが強烈に蘇ってきます。この写真は僕にとってとても重要で、初心に返ることができる1枚ですね」
同点に追いつかれた青森山田は、その後に決勝弾を浴びて2-3の逆転負け。3度目の埼玉スタジアムで初めてピッチから表彰台を見つめた。
「2失点目だけでなく、3点目も僕のミス。3年生に心から申し訳ないと思ったし、だからこそこの3失点という事実を糧にもっと成長しないといけないと思う。この悔しさを結果に繋げるには口だけじゃなくて、1つずつコツコツ結果を出していきたいと思った」