サムライブルーの原材料BACK NUMBER
四国ダービー、0-3から逆転の立役者。
愛媛FCのラッキーボーイ・西岡大志。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byEHIME FC
posted2020/07/18 09:00
6月27日、徳島ヴォルティスとの“四国ダービー”で4点目を決めて、0-3からの逆転勝利に導いた愛媛FCの西岡大志。
3点ビハインドを覆す大逆転勝利の立役者。
そのときだった。徳島のバックパスにプレスを掛け、GKがつなごうとしたボールを川村拓夢が奪い取る。放ったシュートをGKが前にこぼしたところに背番号3、サイドバックから右ウイングバックに位置を上げていた西岡大志が入ってきた。
抑えの利いたグラウンダーのそのシュートは、相手DFとGK2人の股をダブルで抜いてゴールマウスへ。これが決勝点となって、3点ビハインドを覆す大逆転勝利の立役者となった。
「拓夢がうまくインターセプトしてくれて“決めてくれ”って言いました。そうしたら(弾かれて)たまたま自分のところへ。自分もあの位置にいて攻撃に厚みが出来ていたことで、こぼれてきたんだと思います。
そこからはもう冷静に。1人目の股を抜くコースは見えたし、中に味方がいるのも見えたので低いシュートを打てば何か起こるかもっていう思いでした」
大学時代は2試合しか出場していない。
全国的には無名のJリーガーだと言っていい。
東海第五高から福岡大に進学し、17年からFC琉球でプレー。今季、愛媛FCに加入した25歳のサイドバックだ。
彼は“ついていないヤツ”だった。
福岡大時代、トップチームで試合に出たのは「1年生のとき、2試合しかない」。Jリーグでプロになる目標を、あきらめかけた時期もあった。
大学時代で試合に出られていない選手がプロを目指すとなれば、周囲からの冷ややかな視線を感じることもあったに違いない。
「それでもあきらめちゃダメだ、と。大学の4年間は悔しい気持ちをバネに、信念を持って練習に取り組んだつもりです」
心の支えになったのが、6歳上の兄・大輝の存在であった。大学卒業後にサンフレッチェ広島入りし、栃木SCを経て2014年から愛媛でプレーする。
2人兄弟で自他ともに認める仲良し。何かあればいつも優しく相談に乗ってくれた。
「兄貴は僕の目標でしたから。負けたくないっていう思いと、プロになってやるっていう思いと」