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“J7”南葛SCで選手兼デザイナー?
楠神順平が語る葛飾と川崎への愛。
posted2020/07/16 20:00
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph by
Takehiko Noguchi
「会社に入ってすぐにコロナで自宅待機になったんで、やっと会社で働ける感じですね。業務はチームに関すること。商店街を回ってポスターを貼らせてもらったり、パソコンはまだ勉強中ですが、グッズのデザインをしたり……」
そして少し間をおいて「デザイナーです(笑)」と、はにかんだ。
楠神順平、32歳。
現在の所属は、東京都社会人リーグ1部の南葛SC。国内最高峰のJ1から数えていくと、“J7”に相当するカテゴリーになる。世界的な人気漫画「キャプテン翼」の主人公である大空翼が小学生時代にプレーしていたチームと同名で、原作者の高橋陽一氏が代表を務めているクラブである。元々は高橋氏の母校である都立南葛飾高校にちなんで設定されたものだ。楠神は、葛飾区にある南葛SCの運営会社で働きながら、プレイヤーとしての現役生活を続けている。
楠神のプロとしてのキャリアは10年以上。その多くをJ1で過ごしているドリブラーだ。
野洲高校の中心メンバーとして日本代表・乾貴士らとともに全国制覇、その後は同志社大学から川崎フロンターレに入団した。天才肌のボールタッチと独特の緩急をつけた突破に定評があり、新人時代には途中出場ながらガンバ大阪相手に17分間でハットトリックを達成して周囲を驚愕させている。その後、セレッソ大阪、サガン鳥栖などを経て、昨年までは清水エスパルスでプレーしていた。
まだ第一線でやれる自負があった。
そんな彼が、なぜ7部リーグで挑戦を始めたのか。
「この2年ぐらいは、なかなかスタメンを取ることが出来なかったんです。出ても途中からがほとんどでした。ただ、試合に出たらやれると思っていたし、実際、出たら結果は残せていたところもありました。だから正直、J2かJ3ならば、話はあると思っていました」
2019年末、清水との契約が満了になり、楠神は翌年の移籍先を探していた。この年のリーグ戦出場は6試合。カップ戦ではルヴァンカップ、天皇杯で1ゴールずつを記録した。大きな怪我もなく、シーズン終盤には出場機会も得ていたこともあり、まだまだ第一線でやれる自負もあった。
だが30歳を過ぎてベテランと呼ばれる年齢に差し掛かっていた事情もあってか、Jクラブから声がかからない。国外市場に目を向ければ、タイリーグなどからの打診はあったが、年末に待望の第1子が生まれたばかり。家族のことも考え、国内に絞ってオファーを待つことにした。