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降格なしの異例シーズン。昇格組・
柏&横浜FC監督に見える“頑固さ”。
posted2020/07/16 11:30
text by
須賀大輔Suga Daisuke
photograph by
J.LEAGUE
昇格組――。前年に下のカテゴリーで昇格を決めたチームが翌年1つ上のステージで戦うときに使われる代名詞だ。今季のJ1では柏と横浜FCがそれに当てはまる。
何かと昇格組と扱われ、開幕前には残留争い候補に挙げられることも少なくない。ライバルからは勝点を取りこぼしてはならない相手として捉えられる。
しかし、今季の昇格組は例年の昇格組と少し違う様相を見せている。
新型コロナウイルスの流行によりシーズンのレギュレーションが大幅に変更となり、降格がなくなったことで、チーム作りや今季の戦い方に影響することは間違いない。
特に“残留”を目指して戦う昇格組にとっては願ってもない事態だ。一番の目標とするJ1残留がシーズン序盤で決まったことはプラスの想定外の出来事。これについては横浜FCの下平隆宏監督は「ラッキーでしかない」と本音を吐露する。
ただ、この2チームは今シーズンが始まる前からそもそも残留を目標には掲げていない。それよりも上を目指して戦おうとしている。J2を戦う昨季時点から昇格を目指すのと同時にJ1を想定し、意識したチーム作りを進めてきているのだ。
終わってみれば強さを見せつけてJ2を制した柏は、昨シーズン中も常にJ1のレベルを意識していた。たとえ勝っても内容がよくなければ「これではJ1で通用しない」と反省と改善を繰り返しながらシーズンを戦っていた。
だからこそ、ネルシーニョ監督は開幕前に「戦うための準備ではなく勝つための準備をしてきた。その意味でJリーグもルヴァンも天皇杯も、これら3つの大会は当然ながらすべて勝ちにいくつもりで準備している」と断言。昨季からJ1で戦えるチームを作ってきたからこそ、1年目からタイトルを狙いにいく意識と姿勢がひしひしと伝わってくる。
横浜FCも“J1仕様”で昇格した。
同じく横浜FCも下平監督が就任して以降はJ1を意識したチーム作りに着手。“ボールを大事にすること”をコンセプトに掲げ、練習からパス1本にこだわり、意識を徹底した。
昇格が現実味を帯びてきた段階でも「J1に昇格することではなく定着することが目標」と繰り返し説いてきた。そしてシーズン後には選手たちにこう語っている。
「シーズン中からずっと昇格することが目的ではなく、J1に定着することが目的と言い続けていた。解散式でも話したけど、『この解散式が終わった瞬間から俺たちはJ1だから、J1の選手のオフの過ごし方、生活をする。いまから気持ちはJ1仕様にしてやっていかないと取り返しがつかなくなってしまうから、良いスタートを切るためにも俺たちはJ1だとやるんだと覚悟を持って来てほしい』と。('07年と違って)J1に定着しないといけないからね」