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久保建英を非凡たらしめる要素とは。
パスを受ける前の3つの「初期設定」
text by
中西哲生+戸塚啓Tetsuo Nakanishi + Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2020/07/07 11:50
相手がヨーロッパ屈指の守備力を誇るアトレティコでも、久保建英は存在感を発揮する。それにはもちろん理由がある。
「決まるフォーム」で打たせた久保のパス。
得点に絡んだプレーで評価したいのは3点目です。
3トップの右サイドで起用された久保は、ペナルティエリアのわずかに手前でパスを受けます。対面する左サイドバックが間合いを詰めてきますが、1対1のままなら自分でシュートへ持ち込んだでしょう。ペナルティエリア内へ入っていたことを踏まえても、自分がシュートを打つことへの障害はありません。
しかし、局面はすぐに変わります。セルタはもうひとりの選手がプレスバックして、久保から見ると1対2になりました。
ここで彼は、判断を瞬時に切り替えます。内側から攻め上がってきてポソを使いました。走り込んできたポソが自分のスピードを殺さず、左足でギリギリでトラップできるところへ、ラストパスを出したのです。
左足のインカーブでファーサイドへ決めたポソのシュートは、もちろん素晴らしかった。そのうえで言えば、ポソに「決まるフォーム」でシュートを打たせた久保のパスは、最高のおぜん立てだったと言えるでしょう。
アトレティコを久保はどう苦しめたか。
0-3に終わったアトレティコ戦では、数字に残る結果を残すことはできませんでした。それでも、久保のプレーは評価に値するものだったでしょう。
シメオネ監督が指揮するアトレティコは、前節終了時点の失点が「25」でした。レアル・マドリーに次いで、リーグで2番目に少ないのです。組織的にも個人的にも、守備のクオリティは高い。
ところが、スペインをはじめとした各国代表クラスが揃うアトレティコの守備陣を、久保は苦にしません。いつもどおりのプレーで、相手に過大なストレスをもたらしました。私の考える理由は「初期設定」にあります。