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山中慎介、劇的な勝利。岩佐亮佑は
「“倒れさせてくださいよ”って」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2020/07/02 11:10
山中はこの勝利から8カ月後、WBC世界バンタム級王座を獲得して、世界王座12度防衛を果たす。
“神の左”で世界王座12度防衛。
勝者と敗者のコントラストが色濃いのがプロボクシングの世界である。
山中慎介はこの試合の8カ月後、WBC世界バンタム級王座を獲得して約5年9カ月の長期政権を築く。
“神の左”でKOの山を築き、日本人王者歴代2位となる世界王座12度防衛を誇った。引退会見の際には「強くなれたと思えた一戦」として自分の口からこの試合を挙げている。
山中は言う。
「自分のほうが不利という声もありましたけど、自信を持って臨みましたし、自分の強さを証明することができた。ダウンは取れなかったし、確かに倒し切るまではいかなかった。でもああやってラッシュで試合を終えることって世界戦ではあんまりなかった」
ワンツーで終わっていないのがこの時代の山中の特徴。フックを取り入れずにストレートのみの連打を用いている。
山中戦から6年半後、悲願の世界タイトルを奪取。
「フックを入れると腰の回し方が違ってくる。このころはストレート系の回転だけなんで、パンパンパンと。世界戦で出なくなったのは、左ストレートの威力を増すためには左肩までしっかり入れなきゃいけなくなるから。そうなると(左の)戻しも遅くなる。本来はこういう連打が得意でした。
この試合、久しぶりに映像で見ましたけど、打ちつ打たれつのお客さんが喜ぶ試合やったなってあらためて思えるし、お互いに自信満々であることがのぞくいい試合やなって感じました」
名チャンプの階段を駆け上がった山中に対し、岩佐は世界タイトルを獲得するまでに時間を要した。
日本タイトル、東洋太平洋タイトルを手にしてステップアップしながらもリー・ハスキンスとのIBF世界バンタム級暫定王座決定戦に敗れてしまう。
前哨戦を重ね、再び機会を得たのはIBF世界スーパーバンタム級タイトルマッチ。王者・小國以載を6回TKOで下して、悲願の世界タイトルを奪取した。山中戦から6年半後の戴冠だった。