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死闘の中盤。山中慎介は鼓膜が破れ、
岩佐亮佑は「何か星が飛んで……」
posted2020/07/02 11:05
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
“神の左”と現役世界王者の日本タイトルマッチを振り返る特集、全3回中、2回目の記事です。第1回「伝説の試合、山中慎介×岩佐亮佑。クロス一閃、王者がぐらついた──。」、第3回「山中慎介、劇的な勝利。岩佐亮佑は『“倒れさせてくださいよ”って』」は記事最終ページ下にある「関連記事」からご覧ください。
ジャブで主導権を握ったと感じたなら、次は――。
4ラウンド、王者・山中慎介は戦略の「ステップ2」へと移行する。ターゲットは岩佐亮佑の腹だ。左ボディーストレートを積極的に狙っていく。
「攻撃の順番からしたらジャブの次はボディー。下が当たると上の反応も鈍くなりますし、上下散らしておくことで相手の動きが止まる。サウスポー同士なんで、レバーを叩きやすい。下が当たればもっと上が当たるようになりますから」
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狙いどおり、スッとボディーストレートを入れる。
<ヨシッ、これも当たる>
下半身強化が活きていた。
岩佐がクリンチで次の攻撃を回避したときに、会場で応援してくれていた姉の夫と偶然、目が合ったという。
「義兄に対して僕が自信満々に頷いていたみたいで。試合が終わった後にそう言われました。手応えを伝えたかったんやと思います」
元来、ボディーストレートには自信を持っていた。スパーリングパートナーも一発で倒していた威力を誇る。
下半身強化が活きていた。
日本チャンピオンになって、帝拳ジムと契約する中村正彦ストレングス&コンディショニングコーチのもとで臀部(尻)、太腿裏の筋力アップに取り組んでから、下半身のバネをパンチの威力につなげることができる実感を得た。
ひざを柔らかく、上体を柔らかく、ステップワークを駆使して、パンチを打ち込めるとみるや「柔」を「鋭」に変化させる。上と見せて下、下と見せて上。岩佐の動きが鈍くなったというよりも、パンチを散らすことによって岩佐の思考を止めていた。