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山中慎介、劇的な勝利。岩佐亮佑は
「“倒れさせてくださいよ”って」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2020/07/02 11:10
山中はこの勝利から8カ月後、WBC世界バンタム級王座を獲得して、世界王座12度防衛を果たす。
タパレス戦は戦略的かつ、メリハリをつけつつ。
2019年12月7日、アメリカ・ニューヨーク。
運命とは面白いものだ。
山中のスパーリングパートナーを務めていたフィリピンの元WBO世界バンタム級王者マーロン・タパレスとIBF世界スーパーバンタム級暫定王座を争うことになった。強打を誇るサウスポー。岩佐の3敗はいずれもサウスポー相手とあって、タパレス優位とみる向きも多かった。
戦略的かつ、メリハリをつけつつ。
3ラウンドにはダウンを奪い、中盤以降はカットインしてまずタパレスの移動先を消し、相手のパンチを外してワンツー、ボディーとパンチを当てていく。逆にパンチをもらおうがひるまない。強気の持ち味は、あの山中戦のようでもある。
「吹っ切ってガンガン行きました」
11ラウンドに衝撃の瞬間が訪れる。
タパレスの右ジャブの打ち終わりに、ドンピシャのタイミングで左カウンターを浴びせてダウンを奪った。タパレスは立ち上がるのが精いっぱい。レフェリーが試合をストップして、暫定タイトルをもぎ取ったのだ。「お前はまた世界チャンピオンになる」とずっと言い続けてくれた小林会長と力いっぱい抱き合った。
小國に勝ってからはフィジカル強化を図るために山中を指導する中村正彦コーチのもとでもトレーニングを積んできた。
「俺の体、かなり強くなっていたんです。ドヘニーに負けたとき、もっと行けたのに行けなかっただけだと気づかされました。(タパレスの前の試合となる)フアレス戦でそれが分かって、だからタパレスにも吹っ切ってガンガン行きました。それで倒されたら仕方がありませんから」