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元韓国代表ファン・ソンホンの悔恨。
国のために戦い、次はレイソルと……。
posted2020/06/26 18:00
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph by
YUTAKA/AFLO SPORT
「ねぇねぇお父さん~ 一緒に帰ろうよ~」
カシマサッカースタジアムのすぐ外で女の子がファン・ソンホン(黄善洪/当時柏レイソル所属。現Kリーグ2部大田ハナシチズン監督)に話しかけていた。2001年5月19日のJリーグファーストステージ第10節、鹿島アントラーズvs.柏レイソル戦後のことだ。
完璧な日本語だった。彼の次女が無邪気に甘えていたのだった。
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ああ、韓国の名ストライカーも日本が長くなったんだな、と思った。4年目を迎えようとしていたのだ。
すると2-3で敗戦後のお父さんは、娘に一言めちゃくちゃクールに返した。韓国語で。
「パパはバスで帰らないと」
Jリーグで活躍する韓国人選手は34人。
自国では1990年から後の'02年まで4度のW杯代表に選出された。'94年アメリカ大会ではチャンスを逸し続け猛批判を浴び、'98年フランス大会では負傷で1分もピッチに立てず。挫折を経て'02年W杯初戦のポーランド戦での先制ゴールで思いを成就させた。18年前のちょうど今頃のことだ。
その間、彼のキャリアには確かにJリーグが色濃く存在した。'99年に歴代コリアンJリーガーで唯一得点王のタイトルを獲得している。
しかし、ここで再びスポットライトを当てたいのは「明」の部分ではなく、「暗」だ。これがJリーグ27年の歴史の中で、ある重要な点を示唆している。そんな思いがずっとあった。
筆者自身のコリアンJリーガー取材歴でもじつにインパクトのある証言をした人物だ。ピッチでの姿もそうだったが、外でもそうだった。勝負に行くときは徹底して行く。取材の時に、ちょっとだけぶっ飛ぶような思いをしたこともある。これぞ大物、という感じだった。
この週末からJリーグが再開する。それぞれのホームタウンで、韓国人プレーヤーたちもまた、その街の勝利のために尽くす日々が始まるのだ。その数、34人はブラジル人の86人に次ぐ人数だそうだ(今年1月末現在)。
この時に“偉大な先輩”の言葉を。