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元韓国代表ファン・ソンホンの悔恨。
国のために戦い、次はレイソルと……。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2020/06/26 18:00
2002年3月31日、Jリーグ1stステージ、vs.東京ヴェルディ戦でのファン・ソンホン。この試合、1-0で柏レイソルが勝利した。
「俺の携帯番号、知ってるかな? 何でも聞いてきて」
「代表招集の度に日韓を往来することにもう限界を感じていて。だから大会後はなんとかしてレイソルに貢献したかったんですが……」
'03年のこのインタビューでは、Jリーグ時代末期での思いを批判覚悟で躊躇なく口にしてくれた。この取材では「行く」と決めていたのだろう。訥々と話す姿にはピッチ上でのそれと似た気迫があった。
しかし終わった直後には穏やかな表情に戻った。そして聞かれた。「俺の携帯番号、知ってるかな? 何でも聞いてきて」。
とにかくギャップがすごくて、「あああああ、はい」と、逆に返事に焦ってしまった記憶がある。
「日韓サッカーの違いについて聞きたい」は拒否。
引退後、全南のコーチなどを経て'07年に釜山アイパークの監督に就任。その後'11年からは浦項スティーラーズに移り、'12年にカップ戦優勝、'13年にリーグ優勝。しっかりと実績を残した。
監督となってからはこちらには「閉じた」時間が訪れた。
'12年のキャンプの時期に「日韓サッカーの違いについて聞きたい」とインタビューを申し込んだが、断られた。理由は「シーズンの話以外はしたくない」。
'17年、FCソウルの監督となった彼と顔を合わせる機会が短期間で3度もあった。
2月12日にプレシーズンマッチ「さいたまシティカップ」で監督を務めたFCソウルが浦和レッズと対戦。
この日程は早々に決まっていたのだが、なんとその後のアジアチャンピオンズリーグのグループステージ組分けで両チームが同組となったのだ。2月28日に浦和のホーム、5月10日にソウルでの対戦があった。
最初のプレシーズンマッチでの対戦時から、ファンは現場で会ってもさっぱりこちらに目線も合わせようとしなかった。もう戦闘モードに入っていたのだ。こちらも意地悪く、ホームの会見場では目立つ席に座って、逆にずーっと目を見るというセコい「仕返し」をしたが。