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大塚虎之介MLBドラフト指名漏れ。
大リーガーの父、王貞治の助言も。
text by
木崎英夫Hideo Kizaki
photograph byToranosuke Otsuka
posted2020/06/28 20:00
サンディエゴ大3年の大塚虎之介。メジャーで236試合に登板した名リリーバーの父・晶文氏の風貌を思い出す顔つきだ。
ロバーツ家の打撃ゲージで。
ロバーツ監督は晶文氏が現役時代、オフにトレーニングを共にした仲間の1人だ。大学野球は2月から5月までがシーズンだが、今季はコロナ禍で3月に入ってから中止に。するとロバーツ家が大塚家から近いこともあり、虎之介はロヨラ・メリーマウント大に通う息子のコール・ロバーツと共にロバーツ家の打撃ケージで打ち込んできた。そんなある日、虎之介はロバーツ監督からこう助言された。
「コンパクトなスイングと内野をやれれば、プロへのチャンスはあるだろう」
高校の途中で内野手から外野手に転向した虎之介が、吉田のスイングを研究し出したのもこの頃だ。しかし、今後を考えれば力勝負だけでは難しくなる。同じ小柄な体型でレッドソックスの世界一に貢献するなどメジャーリーグで10年の現役生活を送ったロバーツ監督の目を、虎之介が疑うはずもなかった。
「父に負けるわけには絶対いきません」
「虎は二塁かな。二塁手の忙しい動きに連動した、さまざまな角度からの送球をしっかり覚えないと。アドバイスはします。頑張って欲しい」
息子の内野手再転向を後押しする晶文氏は、昨季までの3年間、パドレス傘下3Aで派遣コーチとしてブルペンを担当。今季からはスカウティング業務が主となり、息子のプレーを知る時間を持てている。6月17日からは全米から集まった選手の混成チームで戦う「サマー・リーグ」が地元で始まった。ウイルス感染防止対策の一環で無観客試合のため、動画で観戦中だ。
虎之介にとって、晶文氏はその背中を追うのではなく、「超えるべき存在」であると言い切る。
「父は何もないところからメジャーリーガーになりました。諦めないのはすごいと思います。とても恵まれた環境にいる僕が、その父に負けるわけには絶対いきません」
晶文氏は高校1年の冬に最愛の母を亡くし、兄、姉と励まし合って、母との約束だったプロ野球選手になるという夢をかなえた。海を渡ってからも、毎試合前のアメリカ国歌斉唱の際に「お母さん、ありがとう。今日も見守ってください」とつぶやいていたことを、虎之介に明かしている。