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バイエルン偉業8連覇達成の立役者。
フリックの戦い方と強さの秘訣。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2020/06/22 11:40
「8」連覇を達成したバイエルン。ハンジ・フリックの指導の下、ジェローム・ボアテンク(中央)らが躍動を見せた。
「沈まない。支え合ってきたから」
ここまで“国内無敵”の強さを見せつけられると、僕などはグウの音も出ません。
“アンチ・バイエルン”のせめてもの抵抗は、「バイエルンのマスクを買って送ってくれ」という日本の友人に、「そんなもんはフランクフルト市内で一切売っていない!」と嘘をつき、我が街のクラブ、アイントラハトのクラブマスクを送りつけることくらいです。
まだウイルスが猛威を振るっていなかった昨年12月、大迫勇也が所属するブレーメンが1-6で大敗したバイエルンのホーム、アリアンツ・アレナの雰囲気は荘厳で重厚で、なによりもチーム、ファン、サポーターを含めたすべてのバイエルン・コミュニティから漂う“キングの佇まい”に圧倒されたものでした。
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そんな彼らが大声量で奏でるチームソング『Stern des Sudens』(ドイツ語で『南の星』の意)には、以下のような意味の歌詞が付いています。
「FCバイエルン、南の星。君は決して沈まない。なぜなら、僕らは良いときも悪いときも互いに支え合ってきたから。FCバイエルン! ドイツ・チャンピオン! これが、我らがチームの呼び名だ。昔も今も、そしてこれからも、それはずっと変わらない」
一喜一憂できる現況に幸福を。
現状において、嘘偽りなく、その歌詞通りに頂点に君臨するバイエルンを、僕を含めた他クラブのファン、サポーターは歯軋りしながらも認めざるを得ません。
ドイツ国内での一強時代に終止符が打たれる日は果たして訪れるのでしょうか。同じく『Stern des Sudens』で歌われる、「バイエルンの勝利以上に美しいものがあるか?」という問いに対し、他クラブは現状を真摯に受け止めながらも奮起しなければなりません。
コロナ禍は未だに途上ながら、それでも時は確実に刻まれています。今はただ、苦難の先にある明るい未来に思いを馳せながら、サッカー界のトピックに一喜一憂できる現況に幸福を感じたいと思っています。