ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
バイエルン偉業8連覇達成の立役者。
フリックの戦い方と強さの秘訣。
posted2020/06/22 11:40
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph by
Getty Images
ブンデスリーガは6月16日と17日に第32節を行い、降格圏に位置するブレーメンと対戦したバイエルンがアウェーで1-0と勝利。2位ドルトムントとの勝ち点差を10とし、2試合を残して前人未到のリーガ8連覇を成し遂げました。
僕は個人的にバイエルンのことが嫌いです(笑)。ここ十数年はドイツ国内の有力選手を軒並み獲得して栄華を極め、豊富な資金力と威厳からリーガ内での発言力が大きい点に判官贔屓の感情が芽生えてしまうのが、その理由です。
ただ、これはあくまでも極私的な感情であって、僕の思念が彼らの達成した偉業に何の影響ももたらさないことは明らかなのであります。
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2019-20シーズンのバイエルンの道のりは、決して順風満帆ではなかったと思います。なにしろシーズン中に1人の監督が職を辞しているのですから。
混戦4位から見せた揺るぎない強さ。
昨シーズン、リーガとDFBポカールの2冠を獲得したニコ・コバチ体制のバイエルンは今季序盤からチームコーディネイトに苦しみ成績が安定せず、2019年11月2日のリーガ第10節で、かつてコバチ監督が指揮したアイントラハト・フランクフルトに1-5の大敗。その後、監督が辞任を申し出てクラブを去りました。
コバチ監督としては世代交代の時期にさしかかったバイエルンのチーム刷新を目論んで編成変更に着手したと思われるのですが、その改革は既存選手たちの反発に遭い、それがチーム成績の低迷へと繋がったようにも感じます。
ちなみに、コバチ監督が辞任した時点のバイエルンの順位は勝ち点18の4位でした。ただ、首位ボルシア・メンヘングラッドバッハと勝ち点4差、2位ドルトムントと勝ち点1差、3位RBライプツィヒとは同勝ち点。彼らにしては伸び悩んでいたものの、それでも混戦模様で挽回の余地は十分にあったことも確かです。
いずれにしても、当初は臨時で指揮を託されながら偉業に導いたハンジ・フリック監督の才覚を褒め称えるべきでしょう。
フリック監督が指揮を執るようになった第11節以降の成績は、なんと19勝1分2敗と堂々たるもの。また、チャンピオンズリーグでもオリンピアコス、ツルベナ・ズベズダ、トッテナムといった各国の強豪チームを蹴散らし、新型コロナウイルス感染拡大によってシーズンが中断する直前の決勝トーナメント準々決勝・第1戦のチェルシー戦ではアウェーで3-0の圧勝と、揺るぎない強さを誇示したのです。