プロ野球亭日乗BACK NUMBER
プロ野球にも非常時こその挑み方。
巨人菅野智之は全てを受け入れる!
posted2020/06/18 20:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kyodo News
あのときに比べれば、この3カ月という時は長くはなかったはずである。
「当初は3月20日開幕ということで自主トレ、キャンプから動いてきましたが、そこから開幕の延期が決まり、4月の中旬というところからも二転三転してきました。でも、そんなところで一喜一憂していたら精神的にも肉体的にも持たないな、と……」
6月12日。日本ハムとのプレシーズンマッチに先発した巨人・菅野智之投手は、落ち着いた口調で、新型コロナ禍で揺れ動いたこの3カ月を振り返った。
今季はソフトボールの上野由岐子らが師事するアスリート・コンサルタント・鴻江寿治氏の「骨幹理論」に基づいた新フォームにキャンプから挑戦。足を上げる前に腕を先に二塁方向に引くことで動き出す腕主導の投げ方を自分のものにすることで、更なる進化を目指してきた。
いつもと違うのは、皆さんと一緒。
この3カ月の間にも、その新フォームはさらに進化。以前はセットポジションからグラブをいったん下げて、そこから右後方へと引いていたのを、スッと水平に二塁方向へと動かす始動にマイナーチェンジした。
「よりシンプルに無駄な動きをなくして、今のフォームに落ち着きました。これが完成形と言ってもいいと思います」
この完成形の威力を早速、見せつけたのがプレシーズンマッチ開幕戦となった6月2日の西武戦だった。
この試合で4回を投げて2安打1失点に抑え込むと、12日の日本ハム戦は5回6安打2失点で毎回の9奪三振という力投。新型コロナウイルスの影響で次々と変化していく周囲の状況をものともせずに、3年連続6度目のオープニング投手へと万全のアピールをしてみせた。
「もちろんいつもと違いますよ。でも皆さん同じ条件だと思いますし、自分だけ特別ではないので」
サラッとこう言ってのけられる背景には、もっと苦しく、長い忍耐の日々の経験があるからだった。