プロ野球亭日乗BACK NUMBER
プロ野球にも非常時こその挑み方。
巨人菅野智之は全てを受け入れる!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2020/06/18 20:00
6月12日、日本ハムとのプレシーズンマッチに先発した巨人・菅野。シーズンへの覚悟をにじませる。
2020シーズン、覚悟はできている。
あれから7年が経った2020年は、菅野だけではなく、すべてのプロ野球選手、アスリートが、いや、すべての人々が新型コロナウイルスという見えない敵に翻弄される年となっている。
出口が見えない中でどう自分自身を制御して、多くの制限のある中でどう前を向いて進むことができるのか?
菅野にはあのときの経験があった。
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「まあまあ良かったと思います。ちょっと球数が多い気がしますけど、本番さながらに投げられました」
開幕へ向けて最終先発となった日本ハム戦での81球を振り返った自己評価だ。
「(今年のシーズンは)もちろんいつもと違うと思いますけど、皆さん一緒。自分だけ特別ではないので。5月の初めくらいから今年はこういう特殊なシーズンになっていくと思いました。いまでもこれだけ(色々なことが)起こっているということは、開幕してからもそれなりの覚悟が必要だな、ともずっと思っています。ある程度日程は決まっていますが、本当に流れに身を任せるしかないな、と。その中で自分なりに受け入れていくしかないですね」
まずは目の前にある6月19日の開幕に照準を絞ってマウンドへの準備を整える。そして2020年のシーズンは、ずっとその繰り返しだという覚悟はできている。
こんなときこその挑み方がある。
浪人中に生まれて初めて富士山に登った。
最もキツイと言われる須走ルートを使って約6時間かけて頂上に立った。
「前から登ってみたいとは思っていた。でも多分、一生登らないんじゃないかとも思っていました。だって、野球が終わっておっさんになってから登るのは嫌だったから……」
もちろんすんなりプロ入りしていれば、おっさんになるまでチャンスはなかったはずだ。それでも浪人という特殊な環境があったからこそ日本一の頂から世界を眺め、名物のカーレーライスを食べることもできた。
「富士登山って登って終わりじゃないんです。頂上がゴールでもない。その先にはまだ長い下り坂があって、実はそこが一番、しんどかった! でも、その下りも含めて、全てが富士登山なんですよね」
こういうときだからこそのプロ野球という山への登り方がある。最後の下山まで完璧にこなすために、まずは6月19日に東京ドームのマウンドに立つ。