炎の一筆入魂BACK NUMBER
無観客試合で意気消沈の鈴木誠也。
果たして“スーパーセイヤ”化なるか?
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2020/06/16 11:40
極端に重いマスコットバットを振ってのティーバッティングで汗を流す鈴木誠也。
まるで『ドラゴンボール』の主人公のよう。
「勝てば官軍 負ければ賊軍」の勝負の世界で対戦を重ねるごとに成長してきた。ときに野球人生を左右するようなケガに見舞われても、大きく飛躍するためのバネとした。
戦えば戦うほど強く、傷ついても這い上がってきた。
漫画『ドラゴンボール』の主人公のようだ。純粋に戦うことが好きな主人公のように、鈴木誠も純粋に野球が好き。打てるようになるための練習が苦にならず、打てないような球を投げる投手が現れるとワクワクする。そんな選手だ。
マスコットバットが重たい道着に見えたこともある。
2月の春季キャンプ。各クール最終日に行われる広島名物ロングティー。300球超の球を選手たちが歯を食いしばりながら苦悶の表情で振り続ける中、鈴木誠は1人、マスコットバットで振り続けていた。しかも1200グラムという、マスコットバットの中でも特に重たいもの。全球打ち終えたときに地面に響いた「ドスッ」という音は、昔見たアニメで重い道着を脱ぎ捨てたシーンが思い出された。
昨季でもオープン戦では2割6分8厘だった。
普段は優しい人柄で、純粋に野球を楽しむタイプだけに、真剣勝負にならなければ闘争本能が目覚めない。
首位打者と最高出塁率の2冠を獲得した昨年のオープン戦も打率2割6分8厘だった。逆境や緊迫感、大きな注目を集めることで超集中状態となり「スーパーサイヤ人」のような最強打者と化す。